目次][][][年次リスト

1 アメリカ     United States of America

<2005年>

アメリカ経済のこれまで

<2006年の経済>
 2006年の経済成長率は3%台半ばとなる見込みである。(民間機関54社平均3.4%(06年10月)、IMF3.4%(06年9月))。民間機関の見通しは春時点(3.4%)と同水準となっている。
 四半期別の成長率では、昨年のハリケーンによる影響の反動もあって1〜3月期に前期比年率5.6%の高成長となったが、個人消費等の伸びが減速したことから4〜6月期は2.6%となった。7〜9月期は個人消費等の伸びが高まったものの、住宅投資の大幅な減少等から1.6%(速報値)と減速した。10〜12月期は、原油価格の下落が個人消費等に好影響を与えるとみられるが、住宅市場の減速などから引き続き緩やかな成長になると見込まれている。
 内需面では、個人消費は住宅市場の沈静化による影響の懸念もあるものの、比較的良好な所得環境の中で緩やかに増加している。設備投資は好調な企業収益や高水準の設備稼働率を背景に堅調に推移している。住宅投資は住宅市場が沈静化する中で減少が続いている。
 外需面では、世界経済の回復を背景に輸出が増加しているものの、堅調な内需を反映して輸入も増加しており、貿易収支赤字は拡大している。月次の赤字額では8月に過去最大を記録しており、最大の赤字相手国である中国との赤字額も過去最大を更新した。  雇用面では、非農業雇用者数が昨年の前月差平均19.8万人増を下回る同13.7万人増(1〜10月平均)と緩やかな増加となっている。一方、失業率は4.4%(10月時点)と低水準になっており、時間当たり賃金も上昇傾向が続いているなど、労働市場は逼迫が続いている。  物価面では、原油価格が過去最高水準を更新する中で、年央には消費者物価、生産者物価ともに高水準で推移したが、原油価格の下落とともに足元低下傾向にある。一方、エネルギー価格などを除いたコア物価上昇率は緩やかな上昇が続いている。

アメリカの主要経済指標

<2007年の経済見通し>
 2007年のアメリカ経済は、消費を下支えしてきた住宅市場の沈静化などを反映して、06年に比べて鈍化するとみられる。経済成長率は住宅市場の調整が進む年後半に向かって伸びが徐々に加速すると見込まれているが、07年全体では潜在成長率(3%強)をやや下回る2%台半ばから後半になると見込まれている(民間機関54社平均2.6%(06年10月)、IMF見通し2.9%(06年9月)。
 下方リスクとしては、住宅市場の大幅な失速が他の部門へ波及して経済全体を急減速させることや、原油価格の再高騰が他の要因とあいまって急激な物価上昇をもたらすような場合、政策金利の引き上げを余儀なくされることや長期金利の急上昇を招くことによって景気を減速させる可能性などが考えられる。

実質GDP成長率の実績と見通し

<金融政策の動向>
 FRB(連邦準備制度理事会)は、2004年6月以降、景気の拡大を持続させながらインフレ圧力にも十分配慮する形で、政策金利(フェデラル・ファンドレート(FFレート金利))の誘導目標水準を引き上げてきた。それは0.25%ずつという小刻みながらも連続17回に及んだ。
 しかし、06年8月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRBはFFレート金利の誘導目標水準を5.25%のままに維持するとして2年3ヶ月ぶりに据え置くことを決定した。以後、政策金利の据え置きは3ヶ月間続いている(10月時点)。
 FRBが政策金利の引き上げを休止した理由としては、8月のFOMC声明によれば、「インフレ期待の抑制と、金融政策の累積的効果、その他総需要を抑制する複数の要因を反映し、インフレ圧力はいずれ落ち着く可能性が高い」との認識を示していることから、物価上昇に対する警戒姿勢は持続しつつも、インフレ圧力はいずれ抑制されるとの見通しがあるためと考えられる。また、経済成長が住宅市場の沈静化などを反映して「今年初めの非常に力強いペースから落ち着いてきた」ことから、景気の減速に配慮した政策運営が必要となってきたことなども背景にあると考えられる。
 今後について、FRBは10月のFOMC声明において、インフレリスクに対処するために「必要な追加利上げの時期と程度は今後発表される指標等に基づくインフレ、景気見通しに依存する」としている。

フェデラル・ファンドレート目標水準の推移

<財政政策の動向>
 2006年10月に公表された06年度の財政収支は、2,477億ドル(GDP比▲1.9%)の赤字となり、昨年度(▲3,187億ドル)と比較して、711億ドル(前年比▲22.3%)の大幅な赤字縮小となった。2月の予算教書時における行政管理予算局(OMB)の見通しでは、4,230億ドル(GDP比▲3.2%)の赤字と見込まれていたが、歳入が当初見通しを大きく上回ったことで、単年度の赤字幅としては2年連続の縮小となった。
 歳入が増加した主因は景気拡大に伴う予想を上回る税収の増加である。個人所得税収及び法人所得税収は、それぞれ前年比で12.6%増、同27.2%増と前年度を大きく上回った。また、歳入の増加を下回るものの歳出も拡大した。とりわけイラクなどにおける軍事費、テロ対策等の国土安全保障費、メディケアなどの社会保障費の増加が大きかった。
 ブッシュ大統領は、04年2月の予算教書演説等で、今後5年間で04年予算教書における04年度赤字見込額(5,120億ドル)を半減させる方針を示していたが、目標年度の09年度より3年前倒しで公約を達成した。06年度財政収支の公表日における記者会見で、大統領は「持続的な成長を目指す政策の効果が表れている」として、減税政策が「経済を堅調に維持するうえで、大きな役割を果たした」と述べている。
 議会における動きとしては、06年2月に財政調整法としては97年以来9年ぶりとなる財政赤字削減法が成立した。本法は教育や社会保障分野などを中心に裁量的支出を10年度までで395億ドル程度削減する内容となっている。一方、5月には増税防止及び調整法が成立した。本法は01年及び03年に成立した減税法の一部内容(キャピタル・ゲイン軽減税率など)についての延長措置などを定めたものであり、10年度までで700億ドル程度の減税規模が見込まれている。
 今後の財政見通しについて、行政管理予算局(OMB)の年央財政見通し(7月)では、07年度に再び赤字幅が拡大するものの、08年度には大幅に減少し、以降11年度まで緩やかに減少する方向で推移すると見込まれている。一方、議会予算局(CBO)の経済財政見通し(8月)では、多少の増減はありつつも10年度まではおおむね同水準で推移すると見込んでいる。これは、財政見通しの前提となる経済見通しの評価が異なることに加え、OMBの見通しはイラク戦費等の抑制を事前に織り込むなど裁量的判断が加えられている一方で、CBOの財政見通しは推計時点で確定している政策のみを前提にしていることなどの相違があるためである。また、CBOは11年度以降については、減税政策の時限措置の終了(主に10年末まで)に伴う歳入増を見込んでいることなどから、11〜12年度に大幅な減少を見込んでおり、以後、低水準で推移するとしている。

財政収支見通し

目次][][][年次リスト