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1 アメリカ     United States of America

<2004年>

アメリカ経済のこれまで

<2005年の経済>
 経済成長率は2005年全体では3%台半ばとなる見込みである。(民間機関58社平均3.5%(05年10月)、OECD3.6%(2005年11月))。民間機関の見通しは春時点(3.7%)と比べ、下方修正されている。
 経済成長率は05年前半には1〜3月期に前期比年率3.8%の成長を遂げ、その後、4〜6月期には3.3%、7〜9月期には3.8%の成長となった。雇用面では、ハリケーン襲来前の8月までで、非農業雇用者数が昨年の平均である18.3万人を超える平均20.5万人のペースで増加し、良好な雇用環境、住宅価格の上昇が続いたこと等から個人消費も増加した。また、IT製品の在庫調整が終了するなど企業の健全なバランスシートを反映して設備投資も堅調であったことから景気は拡大を続けている。しかし、8月下旬にメキシコ湾岸に上陸したハリケーン「カトリーナ」の影響から雇用の増加も9月には▲0.8万人となるなど一時的に鈍化し、また7月の自動車販売が大きく伸びた反動もあって個人消費も増加のペースも緩やかになるなど、05年10〜12月期の成長率は若干緩やかになるとみられている。
 原油価格が過去最高水準を更新する形で上昇し、高止まりする中で、エネルギー価格や単位労働コストの上昇圧力の高まり等を通じた経済全体への負の影響が懸念されたが、景気への下押し圧力は限定的なものにとどまった。
 輸出が若干増加したものの、輸入も堅調な内需を反映して中国を始め増加していることから、経常収支赤字は拡大しており、05年4〜6月期にはGDP比5.6%と史上最大の水準となっている。一方、ドルはFRBのFFレート引き上げによる金利格差から実効名目為替レートでみて、上昇基調で推移している。

アメリカの主要経済指標

<2006年の経済見通し>
 ハリケーンの復興需要が高まるとみられる06年上半期には、再度、ハリケーン以前ないしはそれを上回るペースに戻り、景気は堅調に推移するものとみられる。経済成長率は06年1〜3月期、4〜6月期には3%台半ば、7〜9月期、10〜12月期には3%台前半となる見込みであり、年全体では3%台半ばとなることが見込まれている(民間機関58社平均3.3%(05年10月)、OECD見通し3.5%(05年11月))。経常収支赤字はやや縮小するものの、依然として高水準で推移すると見込まれている。
 下方リスクとしては、原油価格の上昇によるエネルギー価格の上昇が消費者や企業のマインドを低下させることや、利上げ局面にもかかわらず低水準で推移してきた長期金利が、インフレ期待の急速な台頭により急上昇し、住宅価格上昇率が低下もしくは下落に転ずることによって家計、企業のバランスシートが悪化し消費や投資が減少することが挙げられる。

実質GDP成長率の実績と見通し

<金融政策の動向>
 FRBは、04年6月以降、フェデラル・ファンド・レート誘導目標水準を0.25%ポイントずつ、計12回引き上げているが、現行の金融緩和政策は依然緩和的であるとしている。ただし、高水準のエネルギー価格を背景とした物価上昇率の緩やかな上昇を背景に、05年11月のFOMC(連邦公開市場委員会)声明においては、「エネルギーやその他のコストの累積的な上昇はインフレ圧力を高める可能性がある」としており、インフレに対し警戒する姿勢を示している。
 FRBがこれまで連続してFFレートの引上げを継続しているもうひとつの理由として、04年7〜9月期以降単位労働コストが前年同期比でみて上昇していることにみられるように、雇用面でのコスト上昇圧力が高まりつつあるということがあるとみられている。10月に公表された05年7〜9月期の単位労働コスト、労働生産性でも依然としてインフレ圧力が存在する傾向が確認された。
 今後についても、インフレ率は上昇してきたもののコアインフレ率は過去数ヶ月比較的低い水準に抑制されており、長期的なインフレ期待もなお抑制されているとみられることから、緩和的な金融政策を慎重なペースでとりやめるとしている。FFレート先物金利の動向をみると(11月時点)、市場は05年末のFFレートを4%強程度と13回目の引上げを織り込んでいるものも多い。

フェデラル・ファンドレート目標水準の推移

<財政政策の動向>
 05年度の財政収支は、05年10月に公表された2005年度財政収支では、3,186億ドル(GDP比▲2.6%)の赤字となり、過去最高の赤字だった昨年度(▲4,128億ドル)と比較すると、937億ドル(前年比▲22.8%)の大幅減となった。予算教書時の行政管理予算局(OMB)の見通しでは、4,270億ドル(GDP比▲3.0)の赤字と見込まれていたが、歳入が見通しを上回ったことで、赤字幅は縮小した。
 歳入が当初の見通しを上回ったのは、景気回復の進展による予想を上回る税収増加による。個人所得税収、法人所得税収はそれぞれ前年比14.6%増、同47.0%増とともに前年度を大きく上回っている。
 歳入が前年度を上回る一方で、歳出の拡大も大きい。歳出のなかでもとりわけイラク、アフガニスタンでの軍事費、社会保障費の増加が大きかった。
 04年の2月の予算教書演説等でブッシュ大統領は、重点目標として今後5年間で財政収支赤字を半減させる方針を示した。スノー財務長官は05年度財政収支を公表するに当たって、減税政策にもかかわらず、財政収支見通しが改善している状況について「低い税率と持続的な経済成長を促す政策によって数百万の職が生まれ、景気が拡大したことによって税収の増加がもたらされた」と述べている。
 一方、ハリケーン「カトリーナ」及び「リタ」の被害総額はCBO(議会予算局)の推計によると1,400億ドルに達すると見込まれており、連邦政府・議会は、既に105億ドル規模の1次補正(9月2日)と518億ドル規模の2次補正(9月8日)、計623億ドル規模の緊急補正予算を成立させた。今後の財政収支への影響としては、洪水保険金支払い、避難者へのメディケイド給付や失業者への失業保険給付等の追加的な財政支出、歳入面では経済活動の中断に伴って税収が今後1年間で50〜100億ドル程度税収減することや、9月23日に成立した「05年カトリーナ緊急減税法」によって06〜07会計年度で60億ドルの税収減が見込まれている。
 OMB(行政管理局)と異なりCBO(議会予算局)の財政収支見通し(8月)では、財政収支は推計最終年度の15年度でも依然として赤字のままであると見込まれている。これは、主にOMB(行政管理局)の財政見通しでは計上されていなかったイラク・アフガニスタン戦費追加支出などの後年度への影響であり、対テロ戦争の帰趨が米国財政収支の大きな不確実要因となっていることを示している。

財政収支見通し

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