世界経済の潮流　2004年秋

15　ドイツ　　　　　Federal Republic of Germany
<2003年>

＜2004年の経済＞
　2004年の経済成長率は、１％台後半程度となる見込みである（６大経済研究所見通し1.8％、民間機関27社の平均1.6％（2004年10月時点））。年前半は、世界的な景気回復により海外からの受注が好調に増加するなか、輸出及び生産が増加し、実質ＧＤＰ成長率は１～３月期が前期比年率1.7％、４～６月期が同1.9％と、外需主導による緩やかな成長となった。一方、内需の回復は遅れている。年初に実施された所得税減税の効果は明確に表れず、医療保険制度改革による患者負担増やたばこ税の値上げなどがかえって消費を押し下げる要因となった。政府は昨年に引き続き労働市場改革を進めているが、雇用情勢には改善が見られておらず、先行き不透明感から消費者マインドは冷え込んでいる。投資も機械設備投資を中心に弱い動きとなっている。年後半は、輸出が引き続き景気のけん引役となることが見込まれる。企業マインドは輸出の増加に対する期待から年初は楽観的であったものの、このところの原油高騰により先行き不透明感を高めている。同様に消費への影響が懸念される。

＜2005年の経済見通し＞
　2005年の経済成長率は、１％台半ば程度となる見込みである（６大研究所見通し1.5％、民間機関27社の平均1.9％（2004年10月時点））。
　外需の増加が引き続き成長を牽引することが予想される。ただし、世界経済の成長がやや鈍化するため、2004年ほどの伸びは見込めない。その代わり、資金調達環境の改善傾向や設備稼働率の上昇から企業の設備投資意欲が増進し、投資が持ち直すことが見込まれる。また、個人消費はわずかではあるが増加することが見込まれる。これにより内需の増加が成長を支えるものと予想される。
　下方リスクとしては、原油高の影響や世界各国の金融引締め傾向から、世界経済の成長が予想以上に鈍化した場合、輸出の伸びが鈍化する可能性が挙げられる。この場合、投資の先送りを招き、内需の回復がさらに遅れる懸念がある。また、2005年に実施予定の労働市場改革（「ハルツⅣ」と呼ばれ、長期失業者への手当を生活保護と一本化する）により長期失業者への手当は実質減額されることとなるが、雇用情勢が好転しない場合、400万人を超える失業者の先行き不安が増し、さらに消費を抑制する可能性がある。

＜財政政策の動向＞
　財政赤字は、2002年がＧＤＰ比3.5％、2003年が同3.8％と「安定と成長の協定」で定めた遵守基準（３％）を超過しているが、2004年においても引き続き３％を超えることが予想される。
　2005年連邦政府予算案は、７月に閣議決定され、連邦議会で審議されている。政府は「構造改革アジェンダ2010」を引き続き実施することとしており、緊縮予算と歳出の効率化を財政政策の最重要課題に掲げている。なお、歳出・歳入予算総額は2,583億ユーロ（対前年比0.4％増）で、歳入では、新規公債発行額を220億ユーロ、その他にドイツポストやドイツテレコム等の民営化企業の政府保有株の売却収入として154.5億ユーロを見込んでいる。これに対しては政府保有株の売却収入の計上額が非現実的であるとの批判が各界からなされていることに加え、政府が掲げる2005年には「安定と成長の協定」の基準である財政赤字３％の達成についても、実現は困難との見方が多い。なお、2004年予算の補正予算編成に当たり、2004年の税収や民営化収入は当初見込みより下回り、政府新規債務がさらに増加することが判明したため、2005年予算についても今後修正を迫られる可能性が出ている。
　2005年１月には2000年より実施してきた「税制改革2000」の最終段階として、総額68億ユーロの所得税減税が実施される予定である。これにより、最高税率42％（現在45％）、最低税率15％（同16％）となる。

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