14 ユーロ圏 Euro Area
<2003年>
<2004年の経済>
2004年の経済成長率は、1%台後半程度となる見込みである(欧州委員会見通し2.1%、民間機関28社の平均1.7%(2004年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年4月時点1.8%)に比べて下方修正されている。2003年後半から世界経済の回復を受けて輸出と生産が増加し、実質GDP成長率は1〜3月期が前期比年率2.8%、4〜6月期が同2.0%と、緩やかな成長となった。年後半も、引き続き輸出が増加する見込みであり、これを受けて生産や投資の増加が見込まれる。また、消費も緩やかな増加が見込まれる。
物価は、主要国での医療制度改革による自己負担増やたばこ税引上げの影響とともに、原油価格の高騰を受け、総合消費者物価指数(HICP)上昇率は、このところ2%を上回って推移している。ユーロ圏の失業率は、9.0%で横ばいが続いている。
ユーロは、2003年秋以降対ドルで上昇し、2004年2月半ばには1ユーロ=1.30ドル近くまで達し、ユーロ導入以来の最高値を更新した後、下落傾向に転じ、5月には1ユーロ=1.18ドルまで下がった。その後、おおむね1ユーロ=1.2ドル台前半で推移していたが、10月中旬以降再び上昇基調にある。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率は、2%程度となる見込みである(欧州委員会見通し2.0%、民間機関28社の平均2.1%(2004年10月時点))。
世界経済の成長率が2004年と比べると低くなることが予想されるため、輸出の増加が2004年ほどには見込めないものの、投資の持ち直しや消費の増加などの内需が成長を支えると見込まれる。
その他の下支え要因としては、低金利政策によって企業のバランスシートが改善してきており、需要の高まりを背景に投資が行われると予想される。また、消費は雇用環境が改善に向かうなかで増加することが期待される。
下方リスクとしては、世界経済の回復の速度が予想以上に鈍化した場合に、域外輸出の伸びが鈍化することが挙げられる。主要国で進展している労働市場改革の効果が出ず、雇用環境に改善が見られない場合、消費者マインドが冷え込み、消費が抑制される可能性がある。さらに、昨今の原油価格の高騰も受けて物価上昇が継続する場合には、購買力の低下に結びつく懸念がある。
<金融政策の動向>
欧州中央銀行(ECB)は、2003年6月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を0.5%ポイント引下げ2.00%とした後、1年以上の間、ユーロ圏では戦後最低の水準である2.00%に据え置いている。総合消費者物価指数(HICP)上昇率が「前年比2%を下回るが2%に近く」とする目標値を超えて推移しているものの、ECBは、中期的な物価安定に沿ったものであるとしている。ただし、原油価格の高騰について、ECBは、10月の理事会において、原油価格の上昇が、物価安定見通しの上方リスクとなることや、ユーロ圏内外の景気回復を抑制する可能性があると述べている。