16 フランス French Republic
<2003年>
<2004年の経済>
2004年の経済成長率は2%半ばになる見込みである(政府見通し2.5%、民間機関27社の平均2.3%(2004年10月時点))。民間機関の見通しは半年前(2004年4月時点1.8%)に比べ上方修正されている。所得税減税、7月からの法定最低賃金引上げ、9月からの小売価格引下げ(政府勧告による大手小売店舗における店頭価格の2%引下げ)等の施策のため、購買意欲が上がり個人消費は増加している。一方、内需の盛り上がりから輸入は増加し、輸出は世界経済の回復を受け緩やかに増加している。また、低金利が続いているため、企業の設備投資や家計の住宅投資も増加している。年後半の景気は個人消費や企業設備投資等の内需を中心に、年前半に比べ緩やかになるものの、回復が続く見込みである。
<2005年の経済見通し>
2005年の経済成長率も2%台半ばとなる見込みである。(政府見通し2.5%、民間機関27社の平均2.3%(2004年10月時点))。
成長を支える要因としては、金融緩和の継続、個人所得税の継続的減税から、個人消費が引 き続き回復することが見込まれる。
下方リスクとしては、失業率の高止まりから雇用環境の改善が遅れており、所得が伸び悩めば個人消費が停滞する可能性がある。また、世界経済の減速による外需の停滞から製造業に影響を与える可能性がある。
<財政政策の動向>
2003年度の財政赤字GDP比率は4.1%となり、EU経済財務相理事会により過剰財政赤字の「勧告」を受けたものの、2004年は景気回復から税収が増加している。2004年1〜8月で、付加価値税(VAT)税収が前年同期比7.2%増、法人税税収が同15.0%増となったため、財政赤字は同9.1%減少した。これにより2004年度の財政赤字は、2004年度予算案における財政赤字額の555億ユーロと比べ50億ユーロ程度減少すると予想されている。税収の増加分は全面的に歳出増加よりも財政赤字削減に充てるとしている。
以上の税収増を受けて、2005年度予算案では、2004年度の財政赤字対GDP比は3.6%へ縮小する見込みを示した。また、同予算案では、2005年度財政赤字を同2.9%とし、2005年度には欧州委員会の「安定と成長の協定」で定める財政赤字対GDP比を3%以下に抑える見込みとなっている。ただし、これはGDPが2.5%成長することを前提とするもので、景気が減速した場合、達成できない可能性もある。また、2005年は電力公社の民営化が予定されており、職員の年金分(70億ユーロ)が民間から政府へ清算金として払い込まれるため、歳入を押し上げることが財政赤字削減の特殊要因となっていることも注意が必要である。一方、政府債務残高対GDP比は2004年度64.8%、2005年度65.0%と、「安定と成長の協定」で定められている60%を上回り上昇する見込みとなっている。
2005年度予算案は財政赤字削減を第一目標として掲げている。したがって、歳出は前年度比名目1.8%増の2,885億ユーロと歳出増加は予想インフレ率程度に抑えられ、3年連続で実質ゼロ成長となっている。歳出は政府の優先課題((1)国防、治安、司法、(2)ODA、(3)研究促進計画、(4)社会連帯計画)に重点的に予算を配分する結果となった。一方、歳入は同6.4%増の2,430億ユーロとなっている。財政赤字削減優先のため所得税の本格減税は見送られたものの、景気浮揚を目的に個人、企業向け合わせ約20億ユーロに上る減税措置が盛り込まれている。