付注1 将来成長率の推計方法について
将来のGDP成長率を推計するにあたり、以下のようなコブ=ダグラス型生産関数を想定する。
ここで、Y:生産量(GDP)、L:労働(雇用者数)、K:資本ストック、A:全要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)であり、αは資本分配率である。
将来のTFP、労働、資本ストックそれぞれについての増加率に関する仮定を置けば、この式に基づき、ある資本分配率の下で、将来のGDP成長率を推計することが可能となる。
(TFP上昇率)
過去(1980〜2002年)の平均上昇率が今後も続くものと仮定している。過去のTFP上昇率の推計については、内閣府[2003]における方法によっている。ただし、ここでは、内閣府[2003]と異なり、データ上の制約から労働時間や稼働率は考慮していない。また、資本分配率について、各国ともα=1/3と想定している。なお、アメリカ、EUについては、データ制約からともに1980〜2001年までの平均上昇率を、フィリピン、インドネシアについてはそれぞれ経済状況を考慮し、1990〜2002年、1985〜2002年までの平均上昇率を用いた。
(労働)
国連推計人口を基に、2003年の労働参加率(労働力人口/全人口)と過去10年間の失業率の平均に基づき雇用者数の伸びを仮定した。
(資本ストック)
投資/GDPの過去の平均(主に1980〜2002年)で将来の投資が行われると仮定し、それに対応して資本ストックが増加していくと仮定した。
すべての国・地域について、2004年と2005年の成長率については、IMFのWorld Economic Outlook 2004 September を利用している。
アメリカとEUについては、Groningen Growth and Development Centreのデータベースの実質GDP、資本ストック、雇用者数を利用した。
台湾を除くその他の国・地域については、世界銀行のWorld Development Indicators(WDI)データベースから実質GDPを入手した。雇用者数については、アジア開発銀行のMain Economic Indicators、国際労働機関(ILO)のLABORSTATから入手した。資本ストックについては、日本については内閣府「民間企業資本ストック」、内閣府政策統括官(経済財政−経済社会システム担当)[2002]を利用し、その他の国については、WDIデータベースの総固定資本形成を用いて、70年をベンチマークとし、除却率を5%と仮定した上で、ベンチマークイヤー法により資本ストックを推計した。
台湾については、台湾統計局データベースを利用し、資本ストックについては他の国と同様に、ベンチマークイヤー法により推計した。人口見通しについても台湾当局の推計値を利用した。
(参考文献)
経済企画庁[1999] 「アジア経済1999」大蔵省印刷局
内閣府政策統括官(経済財政−経済社会システム担当)[2002] 「日本の社会資本」
内閣府[2003] 「平成15年度経済財政白書」財務省印刷局