5 台湾 Taiwan
<2002年>
<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、3%前後となる見通しである(台湾当局見通し3.1%、民間機関25社の平均2.6%(2003年10月現在))。民間見通しは春時点(3.4%)より下方修正されている。SARSの流行により民間消費や輸出等が打撃を受け、4〜6月期の実質GDP成長率は前年同期比マイナス0.1%成長となるなど、一時的に経済は減速した。しかし、7月上旬のSARSの終息宣言とともに持ち直している。
年後半の見通しとしては、輸出受注の増加や景気先行指数の上昇から、景気は緩やかに回復する見込みである。中国(香港含む)向け輸出や投資が拡大を続け、景気を牽引するとみられる。
<2004年の経済見通し>
2004年は緩やかな景気拡大が続き、4%程度の成長になると見込まれる(台湾当局見通し3.8%、民間機関25社の平均3.8%(2003年10月時点))。
成長を支える要因としては、引き続き中国向けを中心に直接投資が行われ、それに伴う輸出の伸びが成長を牽引する見込みである。しかし、製造業を中心に生産拠点を海外へ移転しているため、雇用・所得環境の大幅な改善は期待できず、また、国内の設備投資も伸びは緩やかなものにとどまり、景気拡大は緩やかになると予想される。
下方リスクとしては、デフレの長期化により企業収益が圧迫され、所得が伸び悩み、内需が盛り上がらない懸念がある。また、ITバブルの崩壊以降、金融機関の不良債権が顕在化し貸し渋りが起こるなど、金融仲介機能が低下しており、資金供給が滞る可能性がある。
<財政金融政策の動向>
財政面では赤字が続いており、中央政府債務残高は2002年にはGDP比29.8%となった。7月に台湾行政院が編成した2004年度中央政府総予算案によると、歳入は1兆3,539億元で前年比2.4%増、歳出は1兆6,112億元で前年比3.9%増としている。支出のうち経済発展支出が9.6%増となり、総支出の15.4%を占めることとなった。財政赤字はおよそ2,700億元(GDP比約2.8%)に拡大すると予想しており、国債発行や台湾電力等の株式売却収入等で賄うとしている。
台湾政府は財政制度を健全化し、今後5〜10年以内に財政収支を均衡させる一方で、将来性のある分野に効率よく投資するとしている。台湾政府は今後5年間、年間およそ1,000億元規模の特別予算をとり、台湾高速鉄道等の公共建設に資金を投入することを目指している。また、SARSが流行した5月上旬、台湾政府は500億元(GDP比約0.5%)のSARS防止特別予算を承認した。
金融政策については、中央銀行は過去2年連続で公定歩合を引き下げ、金融緩和を行っている。2003年6月、公定歩合は0.25%ポイント引下げが行われ1.375%となり、過去最低が続いている。