11 フィリピン Republic of the Philippines
<2002年>
<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、4%程度となる見込みである(政府見通し4.2〜5.2%、民間機関6社の平均3.7%(2003年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2003年4月時点3.8%)に比べてわずかに下方修正されている。2003年前半の経済をみると、経済成長率はやや減速傾向にある。実質GDPは、1〜3月期前年同期比4.5%増、4〜6月期同3.2%増となった。これは、低金利やインフレの落ち着きを背景に消費を中心とする民間の内需は増加したものの、財政赤字削減策から政府支出が減少し、外需も振るわなかったことなどによる。特に4〜6月期は、イラク戦争やSARSの影響もみられた。生産面については、エルニーニョによる干ばつから農業生産が不振となった影響が大きい。年後半は、アメリカの景気回復が見込まれることから、輸出及び投資が緩やかに増加していくものとみられる。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、4〜5%程度となる見込みである(政府見通し4.9〜5.8%、民間機関6社の平均4.2%(2003年10月時点))。
成長を支える要因としては、財政赤字縮小に伴う金利やインフレ率の一層の低下、アメリカを始めとする主要国の景気回復による輸出増加、エルニーニョの終息による農業生産の増加などが挙げられる。
下方リスクとしては、政情不安の再燃が、(1)外国からの投資受け入れに悪影響を及ぼすこと、(2)通貨の下落を促進しインフレを悪化させることなどが懸念される。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、8月に議会に提出された2004年度予算案は、歳出が前年度比6.6%増の8,486億ペソとなっており、歳入の見積額は前年度比4.8%増の6,712億ペソとなっている。財政赤字の目標額は1,978億ペソ(GDP比4.2%)と、2003年度のGDP比4.7%、2002年度の同5.2%より縮小をめざしている。課題となっている財政赤字の現状をみると、今年度はかなりの改善傾向を示している。2003年度予算成立時(4月)の見積りによると、年間の赤字目標額は2,020億ペソ(GDP比4.6%)であったが、上半期(1〜6月)の実績をみると、796億ペソとなり02年度上半期の1,197億ペソと比べ33.5%減少している。これは歳入が徴税能力強化策による税収増等から前年度比14.7%増と増加しているのに対し、歳出が同0.1%減と減少しているためである。
金融政策は緩和傾向にある。政策金利である翌日物借入金利及び貸出金利は2002年3月以降それぞれ7.0%、9.25%であったが、03年7月にともに0.25%引き下げられて6.75%、9%となり、92年以来11年ぶりの低水準となっている。為替レートは減価している。イラク戦争後一時増価したペソは、6月以降再び減価に転じ、その後政情不安などもあって減価が続いている(10月中旬現在、1ドル=54.64ペソ)。