12 インド India
<2002年度>
<2003年度の経済>
2003年度の経済成長率は、6%程度となる見込みである(政府見通し6.0%、民間機関6社の平均6.3%(2003年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2003年4月時点5.6%)に比べて上方修正されている。2003年度の経済をみると、2002年度の経済不振をもたらした天候不順(干ばつ)が解消し、農業生産が順調に回復しつつある。農業生産の回復に伴って農村部の購買力が向上し、工業製品への需要拡大が今後見込まれることから、工業生産はこのところ堅調に増加している。輸出は、為替レートの増価もあって今のところ伸び悩みをみせているが、年度後半にはソフトウェアを中心に回復が見込まれている。
<2004年度の経済見通し>
2004年度の経済成長率は、5〜6%程度となる見込みである(民間機関3社の平均6.2%(2003年10月時点))。
成長を支える要因としては、農業生産の増加及び為替レートの安定による輸出の増加等から投資や工業生産が回復することが挙げられる。
下方リスクとしては、規制緩和等構造改革の遅れによる外国からの投資の停滞、財政赤字削減が当初予定ほど進捗しない場合の財政支出の抑制等が懸念される。
<財政金融政策の動向>
財政政策をみると、2003年度予算の執行に必要な税制改正を中心とする新たな財政法が4月に成立した。主な内容は、(1)間接税関連でIT産業用資本財の関税引下げ、パーム油の関税引下げ等、(2)直接税関連で長期キャピタルゲイン税の一部企業の無税化、経済特区内企業に対する免税措置等、(3)サービス税の引上げ(5%→8%)とその対象分野の拡大等からなっている。また従来の売上税に代わって4月1日から実施することになっていた付加価値税は、一部の州の足並みがそろわず当分の間延期されることになった。5月には慢性的な財政赤字を改善しマクロ経済の安定化を図るための財政再建法が成立した。これにより2007年度までに予算全体のうち経常収支部分について赤字を解消し、収支を均衡させることが義務付けられた。同じく5月に投資家保護と企業統治の健全化をめざした会社法が改正された。主な内容は、取締役の増員及び年齢(上限)制限の導入や配当に関する透明性の向上等である。
金融政策については、準備銀行が4月に2003年度の金融政策の概要を公表した。それによると、(1)バンクレートを0.25ポイント引下げ6.0%とする(4月実施)、(2)現金準備率を0.25ポイント引下げ4.5%とする(6月実施)、(3)為替変動によるリスクをヘッジするための先物為替予約を外国人投資家に認める、などとなっている。為替レートは、このところ経常収支の黒字が続いていることなどから増価している。2003年10月中旬現在1ドル=45.4ルピーとなった。