15 ドイツ Federal Republic of Germany
<2002年>
<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、横ばいとなる見込みである(6大研究所見通し0.0%、民間機関24社の平均0.1%(2003年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2003年4月時点0.6%)に比べて下方修正されている。年前半は、2002年秋から続いたユーロ高によって輸出が減少したことや、6月に旧東ドイツ地域で金属産業労組のストライキが行われた結果、生産、設備投資が減少した。このため、2003年4〜6月期まで3期連続マイナス成長となり、景気は後退した。企業マインドは、6月末の所得税減税前倒し決定後、小売業を中心に改善し、さらに株価が上昇基調となったことから引き続き改善している。年後半は、アメリカ経済の回復力が強まることによって海外からの受注増が見込まれることから、輸出が増加し、生産が増加するものと期待される。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、1%台半ば程度となる見込みである(6大研究所見通し1.7%、民間機関24社の平均1.6%(2003年10月時点))。
景気は緩やかながら回復していくと見込まれる。政府は、2004年1月に2005年に予定していた所得税減税を前倒して行うこととしている。これにより個人消費が増加することが期待される。さらに個人所得税が適用される個人企業、合名会社、合資会社などの中小企業が税負担軽減の恩恵を受けることから、これまで先送りされていた設備投資が増加すると期待される。また、世界経済の回復によって輸出の増加が見込まれる。
下方リスクとしては、政府の進めている構造改革により短期的には失業率が高い水準にとどまり、雇用不安から消費が抑制されるおそれがある。また、デフレリスクが顕在化した場合、企業の投資手控えや消費への悪影響も懸念される。
<財政政策の動向>
2002年には財政赤字がGDP比3.5%となった。2003年1月21日、EU財務相理事会(ECOFIN)において、過剰財政赤字の存在についての決定が採択され、4か月後を期限として過剰財政赤字是正のための効果的な行動をとることが勧告された。政府は、2003年においても景気低迷の長期化による社会保障費増大と税収減から、3%目標を達成できないことを5月に認めた。しかし、欧州委員会は、政府のこれまでの財政赤字削減への取り組みや構造改革によって構造的財政赤字が改善する点を評価し、制裁措置の発動には至っていない。
2004年連邦政府予算案は、7月に閣議決定され、連邦議会で審議されている。2004年予算は、財政赤字の累増に対応することを踏まえ、構造改革、景気刺激策、財政緊縮措置の3点をバランスよく盛り込んだものとなっている。具体的には、構造改革では、政府が今春より順次実行に移している「アジェンダ2010」(労働市場・社会保障制度・医療保険・年金制度等広範にわたる構造改革プログラム)をさらに推進する。景気刺激策として2005年に予定されていた所得税減税を2004年から前倒しで行い、現行の最高税率48.5%、最低税率19.9%をそれぞれ42%、15%に引き下げる。一方で財政赤字を抑制するために、持家取得給付金や通勤手当等の補助金の削減等を行う予定である。