14 ユーロ圏 Euro Area
<2002年>
<2003年の経済>
2003年の経済成長率は、0.5%程度となる見込みである(欧州委員会見通し0.4%、民間機関24社の平均0.6%(2003年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2003年4月時点1.1%)に比べて下方修正されている。2002年末から減速していた景気は、2003年前半においてさらに弱含み、4〜6月期にマイナス成長に転じた。2002年秋以降、ユーロは、アメリカの経常収支赤字拡大やアメリカとの政策金利差拡大などを背景に増価基調を一層強め、5月末には対ドルで導入以来の最高値を更新した(1ユーロ=1.19ドル)。このため、上半期において、輸出は減少し、主要な輸出企業の収益が悪化した。また、イラク戦争のために企業マインドが悪化し、固定投資は減少した。年後半は消費者信頼感の改善を受け、個人消費が改善すると見込まれる。さらに、アメリカ経済の回復傾向を受け、輸出の増加が期待されることから、年末にかけて景気は緩やかな持ち直しの動きが見込まれる。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、1%台後半程度となる見込みである(欧州委員会見通し1.8%、民間機関24社の平均1.7%(2003年10月時点))。
成長を支える要因としては、アメリカ経済の回復に伴ってアメリカ向け輸出が増えることにより、生産が増加することが挙げられる。さらに、インフレ率の低下が見込まれ、実質可処分所得の増加が消費回復へつながることが挙げられる。
下方リスクとしては、ユーロ圏経済と密接な関係をもつアメリカ経済の回復力が鈍る場合に域外輸出の伸びが鈍化することが挙げられる。また、企業はバランスシートを改善するために調整を進めているが、ユーロ高が進む場合や銀行からの資金調達が一段と厳しくなる場合には、より一層調整圧力が強まるため、生産、投資が抑制される可能性がある。
<金融政策の動向>
ユーロ圏の金融政策について欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏内の経済成長の減速に対処するため、2003年3月と6月の2度にわたり利下げを行い(合計0.75%ポイント)、政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を2.00%とした。これによりユーロ圏では戦後最低の金利水準となった。
5月初旬には、ECBの金融政策の基本的枠組み(ストラテジー)の見直し結果が公表された。そこでは、物価安定の定義が、従来の「中期的にみて総合消費者物価指数(HICP)上昇率が2%未満」から「中期的にみてHICP上昇率が2%を下回るが2%に近く」に変更された。これは、ユーロ圏内におけるインフレ率格差を考慮するだけでなく、デフレリスクに対して十分な手立てを講じることをねらったものである。さらに、ECBは、政策判断にあたっては、引き続き2本の柱の枠組みに依拠した物価安定リスクに関する包括的な分析に基づくこととしている。第一の柱は短中期的な物価動向に焦点をあてた経済分析、第二の柱は中長期的な物価のトレンドに焦点をあてた金融分析とした。