目次][][][年次リスト

16 フランス      French Republic

<2002年>

フランス2002 フランス経済のこれまで

<2003年の経済>
 2003年の経済成長率は1%未満にとどまる見込みである(政府見通し0.5%、民間機関24社の平均0.5%(2003年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2003年4月時点1.4%)に比べて下方修正されている。世界経済の回復の遅れやユーロ高の影響により輸出の減少、設備投資の減少が続いている。また、失業率の高まりや年金改革関連ストの影響等により、これまで経済成長を支えてきた個人消費も弱含んでいる。アメリカ経済を始めとする世界経済回復の兆し等、経済をめぐる環境は改善しており、年後半は緩やかに持ち直すと考えられる。

<2004年の経済見通し>
 2004年の経済成長率は、1%台後半となる見込みである(政府見通し1.7%、民間機関24社の平均1.7%(2003年10月時点))。 雇用環境の悪化が個人消費を伸び悩ませていることから、2004年度予算法案は経済成長と雇用の確保を優先させる内容となっている。「5年間で100万件の企業設立」はシラク大統領の選挙公約(2002年)の一つであるが、2003年7月には企業設立手続きの簡素化や優遇税制措置を通じた中小企業への投資促進策を盛り込んだ起業家支援法案が成立し、企業設立の増加による雇用創出が期待される。また、景気の減速が続く中、2004年度予算案には、景気刺激を目的として税負担を3%軽減する所得税減税や、社会保障負担軽減措置等が盛り込まれており、個人消費の回復が期待される。さらに、アメリカ経済の回復が、主要な輸出相手先であるEU域内の景気回復を加速させることによる需要の増加が成長を支える要因として挙げられる。
 下方リスクとしては、アメリカの経常収支赤字拡大等を背景としたユーロ高の加速や、世界経済の回復の遅れによる輸出の減少、企業景況感のさらなる悪化による設備投資の回復の遅れが挙げられる。また、失業率の高まり等が消費者マインドに悪影響を与え消費を抑制する可能性等が挙げられる。

フランスの主要経済指標

<財政政策の動向>
 景気減速が続く中、税収の大幅な落ち込みから財政状況は悪化している。財政赤字(対GDP比)は2002年に3.1%となり「安定と成長の協定」で定める3%の上限を超えたため、ポルトガル、ドイツに次いで、2003年6月には欧州経済財務相理事会により4か月以内に有効な対策を採るよう勧告を受けた。しかし、9月に公表された2004年度予算案における財政見通しは、2003年に4.0%、2004年に3.6%の赤字が見込まれており、3年連続で上限を超過する見通しとなっている。ただし政府は、2003年から2004年にかけて構造的財政赤字を0.7%削減するとしており、2005年には財政赤字は3%以下に抑えられる(2.9%)としている。また、2004年度予算案には、歳出抑制のための公務員数の削減(5,000人程度)や、ディーゼル燃料に係る石油製品税の増税も盛り込まれている。
 今後、経済財務相理事会においてフランスに対し必要な措置を講じるよう求める「通告」が協議される予定となっている。しかし、厳しい経済状況を考慮して、構造的財政赤字のさらなる削減等を条件に2004年の上限超過は容認され、制裁措置の適用は先送りされる可能性がある。


目次][][][年次リスト