3 中国 People's Republic of China
<2002年>
<2003年の経済>
2003年の経済成長率はSARSにより4〜6月期は減速したものの、景気拡大が続いていることから、年間で7%台前半の見込み(政府見通し7%、民間機関25社の平均7.7%(2003年10月時点))である。民間機関の見通しは春時点(7.4%)に比べ上方修正されている。
年後半の動きとしては、国内では、都市部を中心とした生活水準の向上が進んでおり、民間消費をはじめとする国内需要が増加し景気を牽引する見込みである。海外からの直接投資や公共投資を含む国内投資が活発なため、生産も堅調に増加する。一方、対外的には、中国・香港経済緊密化協定(CEPA)の締結、WTO以降の更なる市場開放により、貿易も引き続き活発となる見通しである。物価については、近年は供給超過による製品価格の下落が続いていたが、2003年上半期は上昇率がプラスに転じており、デフレは終息したとの見方もある。一方、失業率(都市部)は2003年6月末には4.2%と過去最高となっており、今後も増加すると見込まれる。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は、7.5%前後になる見込み(政府見通し7%前後、民間機関25社の平均7.2%(2003年10月時点))。
成長を支える要因としては、住宅建設と乗用車購入を中心に個人消費が堅調に推移するほか、輸出の増加、公共投資や直接投資の流入を背景に、生産が引き続き拡大するとみられる。
下方リスクとしては、国有企業でのレイオフや農村部からの人口移動で求職者が増加し、失業率の上昇が懸念される。雇用制度に加えて、年金、医療保険等の社会保障制度も整備が遅れていて、将来不安から貯蓄を増やすため個人消費に影響がでる可能性も否定できない。また、不動産をはじめとした建設投資が過熱気味であり、人民元の切上げ観測を背景とする海外からの資金流入も加わって、バブルが生じる危険性もある。
<財政金融政策の動向>
2002年の財政赤字はGDP比3.0%となった。2003年は赤字削減のため、建設国債発行額を前年よりも100億元削減し1,400億元(GDP比1.4%)としている。2003年の政府の経済・社会発展の目標は、農村経済の向上、失業率の抑制と就業機会の創出、ハイテク産業を中心とした産業構造の高度化、西部大開発の推進と地域間経済の調和、市場経済・対外開放の推進、消費市場の育成と拡大、財政収入増加と支出節減、科学技術・教育による国家振興等があげられている。これらの目標に必要な積極財政政策を行うとしている。
2003年の財政状況は順調に推移しており、2003年1〜7月期の財政収入は前年同期比25.3%増の約1.3兆元となっており、予算における収入目標(1.2兆元)を既に達成している。一方、財政支出に関しては、4月末に中央財政から20億元の資金を支出してSARS対策基金を設立するなど特別支出があったものの前年同期比15.0%増と小幅な伸びとなった。
金融政策に関しては、中国人民銀行は貸し出しの高い伸びを抑え過剰流動性を抑制するため、国内金融機関に課している法定準備率を6%から7%へ引き上げた。また、対中貿易赤字を理由に外国からの人民元切上げ圧力が強くなっているが、中国政府や人民銀行は現行の通貨制度を維持すると表明しており、切上げ議論には引き続き慎重な姿勢をとっている。