<2002〜2003年の動向>
2001年の世界貿易(財、数量ベース)は、前年比0.6%減少した。金額ベースでみると、世界輸出は前年比3.0%減少し6兆4,140億ドル、世界輸入は同2.1%減少し6兆6730億ドルであった。世界的な景気減速により貿易量が減少し、特にアメリカやアジア地域のIT需要の減少によりIT関連製品の貿易取引が縮小したことが主要な要因である。また、原油価格の下落も貿易額の減少につながった。
2002年1〜3月期には世界経済回復の動きに伴い、世界貿易の減少幅も縮小している。これは、アメリカでの在庫調整終了によりアジア地域のIT関連輸出が回復したことなどによる。しかし、2002年全体としては、アメリカの景気が減速し始めたこと、中東情勢の緊迫などにより世界経済の先行き不透明感が高まっていることから、世界貿易の回復は緩やかなものに留まる可能性がある。IMFによれば、2002年の世界貿易(財、数量ベース)の伸びは2.2%、2003年は6.2%と予測されている。
<地域の動き>
主要国・地域ごとにみると、貿易額、数量ベースともにすべての地域で2002年初めに回復している。しかし、世界経済を牽引しているアメリカの貿易は6〜7月から鈍化している。アジア地域では2002年初めを底に、輸出入ともに急速に回復している。特に中国の伸びが著しく、2002年1〜8月の貿易額の伸びは、アジア全体が4.9%であるのに対し、中国は17.5%となっている。
こうした中国の台頭の他、東アジア地域において最近注目される動きとして、自由貿易協定(FTA)を主とする経済連携の活発化がある。東アジアでは従来FTA締結の動きはあまりみられなかったが、近年世界でFTAが急増していることを受けて、各国・地域がFTAの利点に着目するようになった。ASEAN諸国と日本、中国、韓国(ASEAN+3)においては既に貿易・投資など地域統合に向けての動きが進展しているが、これらの国・地域が個別にFTAを締結または目指す動きが前進している。これまでFTAには消極的だった日本が2002年にシンガポールとFTAを締結し、韓国や他のASEAN諸国とも締結を目指す方針を示している。また、中国とASEANも具体的な協議を始めている。