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7  シンガポール    Republic of Singapore

シンガポール経済のこれまで

<2002年の経済>
 2002年の経済成長率は、4%程度となる見通しである(政府見通し3〜4%、民間機関25社の平均3.7%(2002年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2002年4月時点3.5%)に比べて上方修正されている。2002年の動向をみると、年前半はIT部門の回復は遅れていたが、化学・薬品関連製品の生産・輸出の増加から景気は回復していた。しかし主力のIT部門が回復しないうちに年央には化学関連も頭打ちとなってきてしまったため、年後半の順調な回復に懸念がもたれている。

シンガポールの主要経済指標

<2003年の経済見通し>
 2003年の経済は、輸出や国内製造業の回復により緩やかに回復し、成長率は5〜6%程度になるものと見込まれる(通貨庁(MAS)見通し5.8%、民間機関25社の平均5.1%(2002年10月時点))。
 2002年の税制改正(後述)による法人税・個人所得税の減税が、国内投資や海外からの直接投資に対して好影響を及ぼすことが見込まれる。一方、商品・サービス税(GST)の引上げが2003年1月に実施されるが、その消費に及ぼす影響を注視する必要があろう。これら税制改正の総合的な効果として、2003年には0.3%のGDP押し上げ効果があるとみられている(MASの試算による)。
 下方リスクとしては、アメリカ経済や欧州経済の減速による輸出の伸び悩みや、雇用情勢の悪化による消費を中心とする内需の回復の遅れが懸念される。

<財政金融政策の動向>
 2002年度予算案の発表は例年に比べ遅れ、5月3日へとずれ込んだ(通常2月発表)。その内訳をみると、歳出は前年度比2.3%増の283億シンガポール・ドル、歳入は同7.3%減の292億シンガポール・ドルとなっており、9億シンガポール・ドルの余剰が見込まれている。この予算案発表と併せて、建国以来の不況に対処するため、2001年度にリー・シェンロン副首相を委員長として発足した経済再生委員会の報告として、抜本的な税制改正案が公表された。税制改正の主な目的は、企業の競争力強化、優秀な人材の受け入れ、雇用の確保などである。主な内容は、法人税率の引下げ(2003年課税年度(2003年1〜12月)より税率を現行の24.5%から22%へ引下げる。さらに今後3年以内に20%に引下げる)、連結納税制度の導入(同一企業内において黒字企業から赤字企業への損失補てんを認める)、個人所得税率の引下げ(2003年課税年度から最高税率を26%から22%へ引下げる。さらに今後3年以内に最高税率を20%に引下げる)、これら減税の財源として、商品・サービス税を現行の3%から5%へと引上げる、などとなっている。
 金融政策は、世界的な金融緩和基調に合わせて緩和されている。3か月インターバンク・レートは2001年末の1.25%から2002年8月末には0.88%に低下している。


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