<2002年の経済>
2002年の経済は、好調な内需や2001年に落ち込んでいた輸出の回復を受けて拡大し、経済成長率は4%程度と見込まれる。1〜3月期の経済成長率は前年比3.7%、4〜6月期は4.5%となり、景気は拡大した。雇用については、大半を占める農業部門とサービス部門で好調であること、さらに輸出回復に伴って製造業部門でも拡大した。その結果、所得が増加し、個人消費が拡大している。しかし、エルニーニョ現象による天候不順により農業生産の伸びが鈍化していることから、下半期の成長率はやや鈍化すると見込まれる。消費者物価上昇率は4〜6月期前年同期比3.4%、7〜9月期同2.8%と安定しているが、原油価格上昇やエルニーニョ現象の影響による食料品価格の上昇の可能性等から、インフレ率が高まることが懸念される。政府の見通しは4.0〜4.5%、民間機関社6社の平均値は4.0%(2002年10月時点)となっている。民間機関の見通しは、半年前(2002年4月時点3.4%)と比べて上方修正されている。
<2003年の経済見通し>
2003年は4%程度の成長になると見込まれる((政府見通し5.5%、民間機関6社の平均4.0%(2002年10月時点)。
成長を支える要因としては、IT関連を中心とした製造業部門の生産拡大や、輸出の増加、物価の安定と低金利、また個人消費を中心とした内需が引き続き堅調に推移することが考えられる。
下方リスクとしては、主要輸出先であるアメリカ経済の先行き不透明、財政赤字削減策の遅れによる海外投資家の投資意欲の低下や通貨下落などが懸念される。
<財政金融政策の動向>
財政は97年まで黒字を維持していたが、アジア通貨危機後税収が減少し、98年以降赤字が続いている。政府は、支出の削減を図る一方で徴税制度を整備し税収確保に努めるなど赤字削減に取り組んでいる。しかし、2002年の徴税状況は政府の目標を下回り、税収の不足から財政赤字は1〜9月で1,665億ペソと、既に2002年当初見込額の1,300億ペソ(GDP比3.4%)を大幅に上回っている。また、2003年の財政赤字見込み額も、当初の984億ペソから1,420億ペソ(GDP比3.3%→3.8%)に赤字見込額が引き上げられるなど、アロヨ政権が中期目標に掲げてきた財政健全化は、厳しい状況に直面している。
金融政策については、政策金利である翌日物借入金利及び貸出金利は、2002年半ば以降それぞれ7.0%、9.25%と10年ぶりの低水準のまま据え置かれている。
2002年1月から正式にインフレ・ターゲット政策を導入しており、2002年のインフレ目標を5〜6%としていたが、食料品価格の安定などを理由として、6月中旬に4.5〜5.5%に引下げ、8月中旬には2003年のインフレ目標を4.5〜5.5%から4〜5%に引き下げた。