<2002年の経済>
2002年は1%台前半の経済成長が見込まれる。2001年に減速した経済は、2002年に入り持ち直しの傾向がみられたが、世界経済の回復が遅れるなかで、景気回復の足取りは力強さを失っている。年後半は輸出が伸び悩むなか、失業率は高い水準で推移しており、これまで景気を牽引してきた個人消費にも陰りが見えてきている。民間機関24社による見通しは平均1.2%となっており、2002年4月時点の予測値1.4%から下方修正されている。
<2003年の経済見通し>
2003年は2%程度の経済成長が見込まれる。ただし、フランス政府は2003年度予算法案において、2003年の経済成長率を2.5%とする強気の見通しを発表している。
2003年度予算法案においては、2002年度補正予算で実施された所得税の5%減税に追加して、さらに1%の所得税減税が盛り込まれており、個人消費がどの程度支えられるかが注目される。
下方リスクとしては、さらに世界経済の回復が遅れた場合やユーロ高の影響によって生産が伸び悩み、企業景況感の一層の悪化を通じて、設備投資の本格的な回復が遅れる可能性や、リストラにより失業者が増加することによって、これまで経済を牽引してきた個人消費に悪影響を与える可能性等が挙げられる。
<財政政策の動向>
景気減速の影響により歳入が当初予算法の想定より不足しているなか、2002年5月の大統領選及び6月の国民議会選挙後に成立したラファラン新政権は、選挙公約である5%所得減税等を盛り込んだ2002年度補正予算法を成立させた。このため、2002年の財政赤字(対GDP比)は2.6%(当初1.9%)に拡大する見込みとなり、マーストリヒト条約で上限と定める3%に近づいた。
また、2003年度予算法案においては、更に1%の追加減税が盛り込まれ、財政赤字(対GDP比)は2002年と同程度の2.6%と設定されており、景気への配慮を視野に入れた財政運営を展開することとしている。
欧州委員会はこの予算案に対して、財政赤字の削減努力が不十分であるとの見解を表明している。この点に関して政府は、政権交代後に行われた財政状況の監査の結果、ジョスパン前政権が示していた数字が不正確であったことが判明し、財政赤字が150億ユーロ増加したためであるとしている。政府は2004年以降の財政均衡を目指し、健全化の継続を確認しているが、具体的な手段は示されていない。
予算法案とともに公表された財政計画によると、2.5%の経済成長を前提とした場合2006年でも財政赤字(対GDP比)は1%にまでしか低下しないと見通されており、前政権が欧州委員会に対して提出していた2004年財政均衡計画から大きく後退した。
欧州委員会の非公式会議(2002年10月)において、毎年少なくとも対GDP比で0.5%ずつ構造的赤字削減に努めるという方針が示され、ドイツ、イタリア、ポルトガルが2003年からの赤字削減実施を表明したが、フランスは、2003年については収支均衡よりも経済成長や防衛支出を優先し、2004年から実施することとしている。