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パート3:中国経済統計の見方(1)
主要な統計集
中国統計年鑑(China Statistical Yearbook)国家統計局編
毎年9月に公表される。統計局だけでなくその他の官庁から発表される、最も詳しい情報が掲載されている。この本に掲載された値が確定値となる。
中国統計摘要(China Statistical Abstract)国家統計局編
毎年5月に公表される。統計年鑑の簡易版であり、内訳などの詳しい資料はないが、半年早く公表されることから速報性の価値は高い。
中国経済景気月報(China Monthly Economic Indicators)国家統計局編
月刊誌で、統計局発表のデータの他にも、月次データはほぼ網羅されている。
中国金融年鑑(Almanac of China's Finance and Banking)中国金融学会編
銀行資金、国債、証券など金融部門の経済指標がまとめて掲載されている。
中国人民銀行統計季報(People's Bank of China Quarterly Statistical Bulletin)
中国人民銀行(中央銀行)発行の季刊誌であり、経済景気月報よりも詳しい金融指標が掲載されている。
景 気
1. 国内総生産(GDP)
<特徴>
四半期値は、名目の実額と実質の伸び率が発表され、生産系列として第1次、第2次、第3次産業の内訳が公表される。支出系列は公表されない。第1四半期は1〜3月、第2四半期は1〜6月、第3四半期は1〜9月、第4四半期は年次ベースで発表される。
年値では、四半期値よりも細かい業種ごとの生産系列に加え、支出系列が、最終消費(家計、政府)、資本形成(固定資本形成、在庫増加)、純輸出として公表される。ただし、実質が公表されるのは生産系列のみであり、支出系列は名目しかない。
実質値は78年を100とした指数で表示され、金額は公表されない。
<参考>
85年からSNA方式が導入され、国民経済を計測する指標として国民総生産が、93年からは国内総生産がある。それ以前には国民収入という概念が導入されていたが、現在では廃止されている。
2. 生産
(1) 鉱工業生産付加価値額
<特徴>
各工場の生産活動の付加価値ベースであり、毎月の供給面の動向を示す指標である。また水道・ガス・電力の供給も含まれている。
月次は名目、付加価値額であるが、同時に発表される前年同期比は、実質ベースとなっている。実質の実額は公表されない。重工業、軽工業別の生産額も同時に公表される。
年値では、所有形態別、規模別に分類された生産額が公表される。2000年からの統計では全国有企業と500万元以上の年間売上を持つ非国有企業が含まれている。但し、1999年以前は全ての非国有企業が対象である。
(2) 鉱工業生産額
<特徴>
付加価値額と同様の分類で公表される。
(注)企業の種類
国有企業: |
| 中央、地方政府が所有、経営する企業。現在国有企業が株式を発行して株式会社化する傾向にあり、政府が筆頭株主となって国有企業と変わらぬ性質を持っている。これらを含めて国有企業と呼ばれることもある。 |
集団所有制企業: |
| 労働者や農民、地方政府が共同出資、経営する企業。郷鎮企業も含まれる。 |
個人・私営企業: |
| 民間資本が所有、経営する企業。従業員数8人以上の企業が私営企業、7人以下の企業が個人企業。 |
その他の企業: |
| 外資系企業や株式制企業などが含まれる。 |
3. 投資
全社会固定資産投資
<特徴>
国有、私有の両方が含まれた、企業分類別、資金の種別、用途別の値が公表されている。計上基準はいずれも取り付けベースである。
<参考>
80年以前は非国有企業の改良分が含まれていないため、それ以降とは接続しない。また97年に調査範囲が改訂され、それまで5万元以上の投資額について集計していたものを、50万元以上とした。
4. 消費
社会消費品零售総額
<特徴>
企業の小売売上動向を示しており、国内需要を見る指標として使われている。都市部、農村部別、企業形態別が細かく分類されている。
5. 物価
(1)全社会小売物価指数
<特徴>
全国の主要都市における主要商品の小売価格を加重平均して算出される。この指数は、政府が2000年までインフレ率をみるための代表的な指標として使用してきた。都市・農村別、商品別の指数も発表されている。
(2)消費者物価指数
<特徴>
2001年より、小売物価指数に代わりインフレ率をみる指標として政府が使用している。小売物価にサービス価格を加えたものである。食品、衣類、生活用品、住居費など品目別の値が公表されているが、ウェイトは公表されていない。2001年から調査対象品目が変わったため、それ以前の値とは接続しない。
(3)その他
工業製品出荷価格指数、固定資産投資価格指数など月次、年値データがある。
6. 労働
(1) 労働人口
<特徴>
中国の労働力を分類する際の基準となっている。主な基準となる概念についてみると以下の通り。
(a)職工 (staff and worker) 「職員」いわゆるホワイトカラーの事務職と「工人」いわゆるブルーカラーの生産労働者を合わせた概念で、都市部の賃金労働者全般を指す。
(b)社会労働者 (employed person) 一定の社会的労働に携わり、労働報酬や経営所得を得ているものを指す。前述の職工に都市部の自営業者、農村部の賃金労働者、自営業者を加えた概念である。
(2) 職工平均工資 (average monthly wage)
<特徴>
企業労働者の月額平均賃金であり、国有企業、集合企業、その他に分けて示される。年次データでは企業別、業種別、地区別データも採取可能。
(3) 郷鎮登録失業員、失業率
<特徴>
失業者数、失業率とも都市部だけしか発表されておらず、農村部については把握されていない。失業者とは、非農業戸籍を持つ、男16〜50歳、女16〜45歳の労働能力と就労意思があり就業していない者で、当該地に「待業」登録しているものを指している。
(4) 全員労働生産率
年間の工業生産額を就労人口で割ったもの。労働生産性に相当する。
国際収支
1. 貿易
海関統計
<特徴>
いわゆる通関統計に相当し、81年以降の輸出入データがある。最近のものについては、品目別(HSコード)、国別、地域別のデータがある。
<参考>
80年以前は国家経済貿易委員会が発表した資料を使っているため、貿易を許された国有企業のみを集計しており、81年以降とは接続しない。
2. 直接投資(契約ベース、実績ベース)
<特徴>
香港、マカオからの投資も含まれている。
3. 外貨準備高
<特徴>
外貨準備高は統計年鑑に年ベース計数が掲載されている。従来、外貨準備高は国家及び中国人民銀行保有分を合計したベースであったが、92年8月以降は国家保有分のみを発表している。
4. その他の統計
<特徴>
国際収支統計のうち、上記以外の全てを外貨管理局でIMFへの申告ベースで把握している。中国ではIMF8条の通貨取引の自由は保障されているが、資本取引は公認されていない。
金 融
1. 為替レート
<特徴>
中国人民銀行が、前営業日のレートに基づいて当日の対ドル基準レートを発表する管理フロート制を採っている。対ドル市場レートの変動は、この基準レートの上下各一定幅の中での変動を許容されている。現時点では、1日の為替変動幅は0.3%前後と言われているが、WTO加盟後の市場取引の活性化をにらみ、今後変動幅が拡大するものと考えられている。
<参考>
81年より公定レートと市場レートの二重為替制度が採用されていたが、94年1月に外為制度改革が実施され、従来割高に設定されていた公定レートが、市場レートに一本化された(事実上の切り下げ)。
2. 株価及び関連統計
(1) 指数の種類
ハンセン指数: |
| 69年よりハンセン銀行が公表している。香港市場の代表的な33銘柄を時価総額で加重平均し、指数化したもの。 |
その他の指数: |
| 上海A株指数、上海B株指数など、それぞれ市場毎、株の種類毎に作られている。 |
(2) 株の種類
A株: |
| 中国国内投資家専用市場の株式(人民元立て)である。B株と比べて取引規模が大きく、優良企業も多数上場している。 |
B株: |
| 主に国外投資家専用の市場の株式(米ドル建て)である。A株と重複して上場する企業が多数。外貨獲得の株式市場との位置付けから、設立以降中国国内投資家の参加は認められていなかったが、2001年6月に国内投資家にも開放されている。 |
H株: |
| 中国企業の香港上場企業の総称である。大型国有で伝統産業、特に重工業系製造業企業が多数上場している。 |
レッドチップ: |
| H株以外の中国本土資本の香港企業であり、通信やサービス、IT企業などが多い。 |
(3) 市場の種類
香港、上海、深センに開かれている。香港が最も大きく、上海、深センの順に小さくなる。
3. 主要金利
法定貸出金利、法定預金金利
4. マネーサプライ(M0、M1、M2)
財 政
<特徴>
各年度の予算案は毎年3月に開催される全国人民代表大会に当該年度の経済計画などと共に提出され、この計数が人民日報等に掲載される。国家財政は、中央政府と省レベル以上の地方政府財政の合計である。歳入に国債発行、対外借入を含んでいない。
<参考>
予算外収入と呼ばれる、国家予算とは別に、地方、部門や単位で徴収する財政資金があり、各部門の予算を補充するものとして使われている。2000年ではGDP比4%を占めている。
社 会
1. 人口
<特徴>
5年に一度人口センサスを実施しており、戸籍に基づく全人口について調査している。直近は2000年に実施された。年次データは1%のサンプル推計である。
2. 農村居民家庭人均純収入、城鎮居民家庭人均可支配収入
<特徴>
都市部、農村部ごとに分かれているが、どちらも1人当たり可処分所得に相当する。
そ の 他
企業景気指数
作成機関 | 国家統計局 |
公表時期(頻度) | 四半期(翌月下旬) |
調査対象 | 18,500社、中小企業も含む。 |
時系列掲載統計書 | 『経済景気月報』 |
|
<特徴>
企業景況感に相当する。指数が100を越えると景気は改善する見通し、下回ると悪化する見通しを示す。工業、建設、運輸、卸売、不動産、社会サービス業の企業が含まれており、全部で35業種に分割されている。
注意事項
1. 季節調整
主な経済統計はすべて1月からの累計で公表されるため、特に季節調整を行っている統計はない。
2. 速報・推定・確報
主な経済指標の年値は、当該年の12月下旬に速報値が発表され、翌年3月の全国人民代表大会で推計値、その後統計年鑑に掲載されて確報値となる。
3. 月次・四半期値・年値の整合性
毎月の値が公表される際に、1月からの累計値が併せて発表されている。
年値は、月次の積み上げと一致することが多いが、統計によっては調査対象が広げられていることもある。
4. 香港、マカオ
香港は97年にイギリスから、マカオは99年にポルトガルから中国に返還されたが、未だ統計の上では別の扱いになっている事が多く、企業の出資元が香港、マカオの場合は、外資系企業となっている。さらにGDPや貿易統計では、香港は中国大陸とは別に推計されている。
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