第I部 海外経済の政策分析 |
中国経済は我が国経済にとって「脅威」である、との見方がある。この背景には、(i)中国経済が高成長を持続していることから、中国の経済大国化に対する不安感や、(ii)中国製品が競争力を高め、我が国企業の市場シェア、ひいては我が国労働者の職が奪われるのではないかとの懸念があると考えられる。特に、90年代以降に中国がハイテク製品など高付加価値製品の輸出を伸ばしていることから、後者の懸念が一層現実的なものとして受け止められるようになっている。
本章では、マクロ経済的な観点から、中国経済脅威論が高まってきた経緯・背景を概観し、海外からの直接投資を梃子に中国経済が90年代に変貌を遂げたことを明らかにする。さらに、90年代の経験をもとに今後10年間の経済展望を試みる。