第1章 (2)分野別の動き

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前節では景気ウォッチャー調査やRDEIを用いて地域経済の動向を概観した。本節では、消費、生産や雇用など分野別の動向を分析し、2025年に入ってからの地域経済の変動の背景や要因を確認する。

(1)消費の動向

(小売業販売は2025年7月から9月頃に鈍化の動き)

まず、商業動態統計により小売業販売の動向を確認する。スーパーやコンビニエンスストアなど日用品を多く販売している業態の小売業販売額の動向をみると、多くの地域で2025年7月から9月頃にかけて販売額の伸びが鈍化する動きがみられた(図表1-3)。

小売業販売額の伸び鈍化の背景については、全国的に共通する要因として物価上昇の影響がある。物価上昇それ自体は小売業販売額を増加させるものの、それ以上に消費者は購入量を低下させたと考えられ、結果として小売業販売額の伸びは鈍化することとなった。各地域の物価動向をみると、2025年初にかけて物価が高まる動きがみられる(図表1-4)。こうした中で、各地域の実質賃金は、2025年初から対前年比マイナス幅が拡大する動きがみられる(図表1-5)。こうした実質賃金の鈍化、言い換えれば消費者の実質購買力の低下が、2025年夏頃にかけての全国的な小売業販売額鈍化の背景の一つとして考えられる。その後は物価上昇率が緩やかに低下する中で実質賃金の対前年比マイナス幅も徐々に縮小する傾向をみせ、南関東、北陸や沖縄では対前年比プラスに転じる動きもみられた。こうした中で、小売業販売額の伸びも再び拡大する動きに転じた。

加えて、地域によっては猛暑などの天候要因が消費に影響を及ぼした可能性がある。小売業販売の業態別の対前年比への寄与度をみると、2025年7月は西日本を中心に家電大型専門店がマイナス寄与となっている。2025年は多くの地域で例年より早く6月中に梅雨が明けるとともに、気温が25℃を超える夏日を記録した日数も6月半ばから急増するなど夏の訪れが早かった。景気ウォッチャー調査の2025年6月調査における現状判断のコメントをみると、気温の上昇に伴いエアコン販売が伸びているといったコメントが多くみられ、2025年6月前後のエアコン売上の状況をみても、北海道・東北を除き6月前からエアコンの売上が対前年比で伸びていることが確認できる(図表1-6)。一方、その反動が7月に現れたと考えられ、こうした天候要因に伴う例年と異なる消費行動も、2025年7月から9月頃の地域における消費の弱さの背景の一つと考えられる。

また、天候要因という点では、2026年初は全国的に寒波や大雪に見舞われ、地域経済がその影響を受けたとみられる。景気ウォッチャー調査の2026年1月調査における現状判断のコメントを確認すると、寒波や大雪の影響に言及するコメントが多く、さらに2026年1月の小売業販売額を確認すると前年よりも伸びが鈍化している地域がみられる。一方で、同年2月調査では逆に寒波や大雪の反動に言及するコメントが多くみられ、幅広い地域で天候要因が2026年初の景況感に影響を及ぼしたと考えられる。

(百貨店販売は訪日外国人の動向の影響を受けて2025年初から夏頃にかけて減少の動き)

一方、百貨店では、スーパー等のその他主要小売業と異なる動きがみられ、全国的に2025年初から夏頃にかけて販売額が減少する動きがみられた(図表1-7)。インバウンド消費は国民経済計算上サービス輸出として扱われる点には留意が必要だが、百貨店販売は訪日外国人数が増加する中でインバウンドの変化の影響を受けやすい面がある。訪日外国人の動向を確認すると、コロナ禍を経て、各地域共に対前年比で大きく増加が続いていたが、2025年に入ってからその伸びが鈍化し、夏頃にかけて対前年比でマイナスとなる地域も出てきた(図表1-8)。

データの確認ができる関西地域の百貨店の免税売上額4の動向を確認すると、訪日外国人の変動に合わせて百貨店の免税売上が変動する動きが確認できる(図表1-9)。2024年はコロナ禍を経て訪日外国人数が大きく回復する中で、免税売上も対前年比で大幅なプラスの伸びを示すなど好調な販売を記録していたが、2025年初から伸びが鈍化し、日本で大災害が起こるとの風説が広がった夏頃にかけて香港などアジアを中心とする国・地域からの訪日が控えられた結果、免税売上は対前年比マイナスに転じた。こうしたインバウンド需要の変動に伴い、関東、中部、近畿、九州・沖縄の百貨店販売額が大きく鈍化したとみられる。しかし、風説の影響が収束するにつれて徐々に販売額は回復し、2025年末にかけて対前年比マイナス幅が縮小していった。

コラム1:2026年初の寒波や大雪の影響

2026年1月は全国的に寒波や大雪に見舞われ、景気ウォッチャー調査の2026年1月調査では、寒波や大雪といった天候要因に言及する景気ウォッチャーのコメント数が大きく増加した(コラム1図表1(1))。「寒・雪」のキーワードに言及した回答者グループのDI(原数値、以下「「寒・雪」のコメントDI」)を2025年1月と2026 年1月で比較すると、「寒・雪」のコメントDIは全国で45.0から37.1と約7.9ポイント低下しており、昨年以上に寒さや雪といった天候要因が景況感を下押ししていることがうかがえる。地域別では、北海道、甲信越、北陸、近畿で低下幅が大きい(コラム1図表1(2))。また、「寒・雪」のコメントDIが景況感にどの程度影響を与えたかを計算5すると、前年の2025年1月調査で現状判断DIを▲0.02ポイント程度下押ししたのに対し、2026年1月調査では▲0.56ポイント程度の押下げと試算され、前年より押下げ幅は拡大した。また、前年は押上げ要因だったが本年は押下げ要因に転じている地域もあり、具体的には、北海道▲0.85ポイント程度(2025年1月調査は+0.56ポイント程度)、甲信越▲0.87ポイント程度(同+0.09ポイント程度)、北陸▲1.96ポイント程度(同+0.74ポイント程度)、九州▲0.54ポイント程度(同+0.06ポイント程度)と、幅広い地域で寒波や大雪が景況感を下押ししたと考えられる。

また、景気ウォッチャーのコメントを確認すると、小売業では、寒さや大雪により来客数が減少している、暖房費の上昇が消費抑制に働いている、商品流通に悪影響を及ぼしているといったコメントがみられた。また、ホテルや飲食店などのサービス業では、大雪で交通事情が悪化し来客数が落ち込んでいる、予約のキャンセルが相次いでいるといったコメントがみられるなど、寒波や大雪が地域の消費活動に影響を及ぼしたことがうかがえる。

実際の消費活動にどの程度の影響があったかを確認すると、小売業販売額は、北海道、東北と中部を除いて前年比の増加率が昨年から縮小し、全体でも増加率は1.2%ポイント縮小した(コラム1図表2)。ホテルへのカード支出額は、全ての地域において対前年比でマイナスとなり(コラム1図表3(1))、飲食店(居酒屋)の消費額も、対前年比でマイナスの地域や、伸びが大きく鈍化している地域が多い(コラム1図表3(2))。

「寒・雪」に言及している景気ウォッチャーが、天候要因だけを背景に景況感を判断しているわけではない点には留意が必要だが、「寒・雪」に言及する景気ウォッチャーのコメント数やコメントの内容、そして消費に係るデータの動向を合わせて見れば、寒波や大雪といった天候要因が一時的に景況感の押下げに寄与した可能性は高いと言える。

(2)輸出・生産・設備投資の動向

(輸出・生産は一時的に関税引上げの影響は受けたものの、その後は持ち直しの動き)

次に、輸出の動向をみると、米国による相互関税が発表された2025年4月以降、地域によっては米国向け輸出が対前年比で押下げに寄与し(図表1-10)、特に、北関東や中国地方において米国向け輸出の押下げ寄与が大きかった。両地域共に自動車をはじめ製造品出荷額に占める輸送用機械出荷額の域内シェアが高いことを踏まえ、同じく輸送用機械出荷額の域内シェアが高い地域である南関東、東海、九州6と共に、2025年に入ってからの自動車輸出額・台数の動向をみると、いずれの地域も春以降、輸出額が減少する動きがみられる。ただし、輸出台数をみると、東海ではむしろ増加しており、その他地域でも輸出額の落ち込みの方が大きくなっている(図表1-11)。日系自動車メーカーが追加関税によるコスト増加に相当する分、輸出価格を引き下げて現地の販売価格を維持し、コストを自社内で吸収することで対応してきたことがうかがわれる7。しかし、夏以降は地域ごとに異なる動きをみせている。秋頃にかけて、東海では輸出額も増加に転じ、南関東、中国地方、九州では輸出額・台数共に対前年比マイナス幅が大きく縮小する動きがみられた。北関東では秋頃にかけて輸出額・台数共に対前年比マイナス幅は縮小したものの、他地域と比較して小幅なものにとどまり、その後、2026年1月に約半年ぶりに対前年比プラスに転じている。

次に、生産の動向を確認すると、いくつかの地域では2025年春頃から夏頃にかけて対前年比で減少する動きがみられた(図表1-12)。東北では「電子部品・デバイス、電気・情報通信機械」、北関東、南関東、東海では「輸送機械」、中国地方では「輸送機械」に加えて「石油・石炭製品、化学、プラスチック製品」、四国でも「石油・石炭製品、化学、プラスチック製品」のマイナス寄与が大きい。その後は、振れ幅が大きいものの、多くの地域で対前年比のマイナス幅は徐々に縮小し、プラスに転じる地域もみられる。

(経常利益、設備投資は一部地域で弱い動きがみられる)

各地域の2025年度の日銀短観の経常利益計画をみると、東海や中国地方では3月調査から12月調査にかけて計画値が大きく下方修正されていることが分かる(図表1-13)。業種別にみると、製造業で12月調査にかけて大きく下方修正されているが、さらに、大企業の推移をみると、北関東の製造業でも大きな下方修正の動きがみられる。これら地域は製造業の域内シェアが高く、また、輸送用機械の出荷額に占めるシェアも高い地域8であり、米国の関税引上げの影響もあって経常利益計画が大きく下方修正されたとみられる。

次に、設備投資額の動向を確認する。対前年比で設備投資の動向を確認すると、いずれの地域も非製造業の変動は非常に大きい一方、製造業では北陸の2025年4-6月期に大幅な増加がみられるものの、その他の地域・時期で大幅な変動はみられず、2025年10-12月期も9地域中、6地域で対前年比プラス寄与となっている(図表1-14)。一方、日銀短観の設備投資計画について、2025年度計画とそれ以前の過去3か年度(2022~2024年度)の計画を比較すると、2025年12月調査時点で過去3か年度を下回っているのは東北、北関東、中国地方である(図表1-15)。特に、北関東は当初計画(3月調査時点)から大きく下方改定されている。北関東には米国を主要輸出先とする自動車メーカーの工場が存在していることもあり、今後の動向には注意が必要である。

(3)雇用の動向

(2025年夏頃にかけて求人に一時的に弱い動き)

次に、各地域の雇用の動向を確認する。まず、完全失業率の動きをみると、2025年を通じて各地域共に振れを伴いつつも、基調としては横ばい圏内となっている(図表1-16)。

さらに、有効求人倍率の動向をみると、各地域とも1を超える水準が続いているものの、緩やかに低下する動きがみられる(図表1-17)。さらに、民間職業紹介の各地域の求人数9をみても、2025年に入ってから夏頃にかけて、各地域共に求人数が減少する動きがみられ、米国の通商政策に対する不透明感から、企業が新たな採用を手控えていた可能性も考えられる(図表1-18)。しかし、夏以降は多くの地域で求人が増加する動きに転じている。

一方、日銀短観の雇用人員判断DIの動向をみると、製造業・非製造業にかかわらず、各地域とも不足超が続いており、引き続き厳しい人手不足が続いているとみられる(図表1-19)。


4 免税売上額とは外国人旅行客などの非居住者による消費税免税物品の購入額。
5 ここでいう影響とは、全国の場合は全国のDIと全国で「寒・雪」に言及しなかった回答者グループのDIとの差を、地域別の場合は地域別DIと当該地域において「寒・雪」に言及しなかった回答者グループのDIとの差をいう。
6 内閣府政策統括官(2025)p.13。
7 内閣府政策統括官(2026)p.6。
8 内閣府政策統括官(2025)p.12、13。
9 本レポートにおける民間職業紹介の求人は、インターネット上の100以上の媒体における求人広告をスクレイピングしたデータである「HRog賃金Now」における求人数を指し、職業安定法上の職業紹介とは一致しない。
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