(補論)物流業の人手不足問題
地域における人手不足問題として、いわゆる「物流業の2024年問題」についてみていきたい。2018年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、2019年から時間外労働の上限規制が順次施行されている。「物流業の2024年問題」とは、2024年4月からトラックドライバーにも上述の規制が適用される予定25となっており、これにより一部のトラックドライバーの労働時間が短くなることが想定され、物流業の輸送力が低下する可能性があるという問題である。何も対策を講じない場合、輸送力が2019年度の貨物輸送量に対して約14%不足し、さらに2030年度には貨物輸送量に対し約35%不足する可能性があるとの試算結果26もある。また、地域別では東北、四国、北海道、九州などで不足が大きいと試算されている。
物流業は、こうした当面の働き方改革への対応に加え、ドライバーの高齢化や労働生産性の低さといった構造的課題を抱えており、中長期的な観点から課題解決に取り組む必要がある。本補論では、物流業の人手不足問題の経済的側面として、労働供給面での課題と労働生産性が低い要因を明らかにするとともに、課題解決に向けた方策の検討を行いたい。
脚注25 大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、年720時間の上限規制が適用されている。ただし、幾つかの事業・業務では規制の適用が猶予されており、自動車運転業務では2024年4月から年960時間の上限規制が適用されることとなっている。
脚注26 経済産業省「第3回持続可能な物流の実現に向けた検討会(2022年11月11日)資料1「物流の2024年問題」の影響について(株式会社NX総合研究所)」、株式会社野村総合研究所「第351回NRIメディアフォーラム トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方~地域別ドライバー不足数の将来推計と共同輸配送の効用~」より引用。詳細は第1-4-5図を参照。