第1章 地方への新たな人の流れと地方のデジタル化の現状と課題
新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という)の感染拡大は、都市や地方の経済動向に大きな影響を与えた一方、テレワーク等の普及が進んだことで働き方が変化したこともあり、東京圏への転入超過数の減少など、人の流れを変えた。2021年公表の「地域の経済2020-2021」では、この機を逃さず、地方への人の流れを促進し、東京一極集中を是正していくための取組等が重要であると指摘したところである。
感染症直後にみられた新たな人の流れはこのところ一部感染症前に回帰する動きがみられるものの、地方移住への関心は引き続き高い。こうしたなか、地方への人の流れを促進するためには、多様で柔軟な働き方が定着していくとともに、地方においても雇用増・所得増の環境が確保されるべく、地方の経済成長力が高まっていくことが重要である。その結果、そこに暮らすことによる経済的利益が実感されることになれば、さらに移住への関心も高まることが期待される。
また、感染症を契機にした暮らしにおける変化として、オンライン消費(電子商取引=Electronic Commerce、以下「EC」という)やオンライン教育、オンライン診療などデジタル化の広がりがあげられる。こうしたデジタルの利活用は、地方で暮らすにあたり、地理的に不利な条件を解決するより有効な手段となりうる。
2021年秋以降のワクチン接種の進展等をうけ、ウィズコロナの考え方の下、政府は、経済社会活動の正常化を進めるとともに、特に地方活性化に向けては、「デジタル田園都市国家構想1」に基づいた取組を進めてきている。
こうしたことも踏まえ、本章では、「感染拡大当初にみられた地方居住への関心の高まりや働き方の変化は継続しているのか」、「地方の暮らしにおけるデジタル技術の利活用は進んでいるのか」、「地方の賃金・生産性を高めるための課題は何か」といった問題意識の下、(1)地方への新たな人の流れの進捗状況と課題、(2)暮らしにおけるデジタル化の地方への広がりの現状と課題、(3)地方の賃金・生産性向上に向けた課題、についてそれぞれ検討する。最後に本章のまとめとして今後の展望も含めて整理する。