第2章 地域の「稼ぐ力」を高める

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地域経済を活性化するためには、短期的な需要創出にとどまらず、当該地域経済の自律的な成長力、「稼ぐ力」の向上が必要である。本章では、地域の「稼ぐ力」について、自然資本、人的資本、物的資本といった地域にあるストックの賦存状況に注目するとともに、「地域ブランド」の経済的価値を分析する。また、「地域ブランド」の活用等により、地域の「稼ぐ力」を高める方策について検討する。

<ポイント>

  • 「稼ぐ力」とは付加価値を生み出す力であり、地域の「稼ぐ力」は、個人と企業、そしてそれらが立地する地域の有形・無形の資産からなると定義。「稼ぐ力」を付加価値に対する税額で評価すると、何れの地域でも増加しているが、水準は東京、名古屋が上位。また、地域により主要な源泉所得が異なり、東京は配当所得が高め、給与所得が少なめ。企業の「稼ぐ力」である利益も大きく増加しているが、増加寄与の業種は地域によって異なり、東京は金融保険、仙台は建設等。
  • 付加価値を生み出す資産には、自然資本、人的資本、物的資本が存在。面積当たり自然資本は沖縄県と北海道、一人当たり人的資本は東京都と大阪府、一人当たり生産資本は山口県と三重県に豊富。組合せは地域によって様々。
  • 「地域ブランド」も付加価値を生み出す資産。経済的意味は製品差別化であり、確立するには消費者側の認識が必須。また、社会的な保護制度として地理的表示保護制度や、地域資源利用を促進する中小企業地域資源活用促進法等は重要なインフラ。「地域ブランド」は、出荷価値や宿泊施設稼働率にプラスの効果。
  • 地域の「稼ぐ力」を高めるためには、ITやグローバル市場の活用が重要。ITの力で人手不足を克服し生産性を高めることが重要。また、「地域ブランド」を活かしてグローバル市場の潜在需要を取り込むことが重要。アジア諸国の我が国農林水産輸出への潜在需要は2021年に1.1兆円(2015年の2.1倍)の見込み。拡大する訪日外国人旅行者の帰国後の需要を掴むことで、地域における「コト消費」と「モノ消費」を拡大させることを期待。
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