第1章 地域別にみた経済の歩み
2017年の前半は、雇用・所得環境の改善や株価の安定的な推移等を背景に、マインドも改善しており、生産は内外需の堅調な動きに呼応して増勢を維持してきた。外国人旅行客は引き続き増加しており、国内旅行者も合わせた交流人口の増加による観光やサービス等の需要喚起も続いている。しかし、こうした動きは、各地域の立地産業や観光資源の違い、また、地方創生の取組の違いなどによって、程度が異なっている。第1章では、2017年前半を中心にこうした地域経済の動きについて整理する。
<ポイント>
- 消費は、スーパーやコンビニ等を含めた小売販売額全体は多くの地域で増加もしくは底堅く推移。ただし、インバウンド需要も小さい地方の百貨店等は苦戦が続き、商店街は、高齢化・人口減少といった構造問題に直面。ネット販売は増勢が続くものの、配送業事業(貨物自動車運転手)の人手不足が顕著であり、生産性の引上げが課題。他方、観光需要は堅調に推移し、訪日外国人旅行者の訪問先も多様化。需要も「モノ」から「コト」へ拡がり。
- 生産は、全国的に輸送機械やスマートフォン関連の電子部品・デバイス等がけん引しており、立地業種の差によって地域動向に大きな違い。一方、中長期的には、高齢化や高品質化等の構造変化に呼応する企業の立地によっても地域間で生産に増減差。
- 資金仲介役である金融業は、緩やかながらも再編が継続するなか、利益率や営業費用収益比率は地域内でのばらつきが大きく、銀行数が少ない寡占的な地域ほど利益率の下限値が高めであり、資産規模だけでなく、競争環境が影響。将来を踏まえると、人口減少に対応するビジネスモデルの見直しが必要。
- 雇用指標は、全地域において改善しているが、時給賃金の上昇にはばらつき。労働需給の引き締まりは、黒字廃業や人手不足倒産の原因にも。地方も労働需給はひっ迫しているが、東京への労働移動は継続。ただし、都市部での就業に伴う機会費用負担は大きく、働き方や働く場所の多様化が課題。