補論2 景気ウォッチャー調査の分析

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景気ウォッチャー調査は、毎年12月の調査結果を受けて、年一回の季節調整替を実施しているが、2015年12月調査は、全国動向DIの季節調整値の算出方法を見直した20。具体的には、季節性の表れ方が構成分野(家計、企業、雇用)毎に異なる点等を踏まえ、分野別に季節調整を実施し、加法整合性を維持する形で全国動向DIを算出する方法へと変更した。分野別に季節性が異なることは、家計、企業、雇用それぞれの制度や慣行等から生じる独自の月次パターンや四半期パターンの存在を意味する。

こうした季節性を捉える際には地域に着目することも可能である。休日や祝日は全国共通であり、働き方にもあまり差はないことから、分野別ほどの季節性の違いはないかもしれないが、各地域に固有の制度や慣行等があることから、独自の月次パターンや四半期パターンが検出されると期待される。そこで、以下では地域別DI(全11地域、現状判断、先行き判断)に季節調整を実施し、それらと全国の季節指数を比較することで、幾つか特徴的な動きについて考察を加える。

(現状判断指数では北海道と沖縄の季節性に特徴)

地域別の現状判断指数において、特徴的な動きを示すのは、北海道と沖縄である(第7-1-1図)。これらは、全国指数とのかいり幅が各地域と比較して特に大きく、季節性が強く出る傾向にある。1年を通じてその幅が大きくなるのは、近年では北海道では5月と8月、沖縄では主に5-6月と8月となっている。

5月については、例年、全国的にゴールデンウィークにおける旅行等の消費増加、休暇に伴う生産減と在庫増等が季節性として現れる傾向にあるが、近年の北海道と沖縄は全国対比で季節指数の上昇幅が小さく、微増にとどまっている。このため、各地域の中でも特に全国対比でのかいり幅が大きくなっている。

北海道は5月調査の比較期間である2月頃に冬のイベントが集まる等、観光需要が高まっていることから、ピーク期と比べると指数は控えめになるとみられる。また沖縄については、気象庁の過去データによると梅雨入りが平年5月上旬で、梅雨明けが6月下旬となっていることもあり、同時期は観光シーズンとしてはピークではないことも背景としてある。このような中、5-6月の沖縄の季節指数は例年、全国対比で低めである。

ただ、5月における北海道の季節性は2011年を境に変容している事にも留意しておく必要がある。同年以降は5月における北海道の季節指数が低下し、全国よりも低い水準が続き、そのかいり幅が拡大してきている。

8月については、お盆や夏季休暇の中、人が旅行等で域外へ流れやすいこともあり、近年は季節指数が落ち込む傾向にあるが、北海道、沖縄はプラス傾向となっている。両地域は例年、観光需要を取り込んでいることから、各地域対比で特に景況感が高まりやすい傾向が表れている。

(先行き指数では近年、全国と沖縄との間のかいり幅が縮小)

一方、先行き指数においても、北海道と沖縄が全国平均とは振幅の程度が異なっていたが、近年、沖縄と全国のかいり幅は縮小傾向にある。例えば、沖縄については、4月に全国値とのかいり幅が拡大する傾向にあった。この背景としては、全国的には4月からの2-3か月後はボーナス時期でもあり、消費増への期待もあって平均的には景況感の良い時期にあたる一方で、上述のように沖縄ではまだ梅雨明けをうかがうタイミングでもあり、観光面ではピークから外れるため、全国値対比で指数は強くないことから、かいり幅が拡大する傾向にあったと考えられる。しかしながら近年は訪日外客等による稼働水準の上昇が期待に影響している可能性もあり、4月の全国とのかいり幅は縮小してきている。

他方、近畿は2012年以降、東北は2014年以降、季節性が弱まっている傾向があり、東海と中国が逆の動き方をしている。人々の期待に含まれる季節性が変化する背景には、制度的な変化や慣行の変化だけでなく、需要パターンの変化が景気ウォッチャーの目線に影響を与えている可能性がある。近畿は沖縄と同様、訪日外客の受け入れが拡大しており、需要パターンの平準化による効果が期待の季節性に影響している可能性がある(第7-1-2図)。


脚注20 詳細は「景気ウォッチャー調査の季節調整値の改訂について(平成27年12月調査)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_kisetu20160112.pdf」を参照のこと。
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