第2章 地域における景気回復の波及
第1章でみてきたように、地域において景気回復の動きがみられているが、「景気回復の実感がない」といった声が聞かれることも事実である。そこで、第2章ではこの景気回復の動きがどのように波及しているかについて概観する。
ここで留意すべきは、景気は経済活動の量的な側面だけで必ずしもとらえきれるものではないということである。
一般に、地域において「景気回復の実感がない」という指摘を考えるに当たって、まず、全国ベースでも経済主体や業種によって景気回復の感じ方に違いがある点に留意が必要である。例えば、景気ウォッチャー調査(9月調査)では、3割近くの人が「景気が(やや)良くなっている」と回答しているのに対し、一般的な世論調査では「景気回復を感じる」という回答は少数にとどまっているが、このような違いが生じるのは、景気ウォッチャーが景気に敏感な職種の方々に委嘱されているからでもある6。加えて、そのときどきの景気持ち直し局面が公共投資主導か、外需主導かといったパターンによって、業種による影響の度合いが異なるのは当然であろう。また、その業種や業態が直面している中長期的なトレンド(構造変化)が景況感にも影響を及ぼすという面もあろう。
したがって、地域における景気回復の感じ方に差があるとすれば、業種の分布状況の違いがその背景として重要であると考えられる。具体的には、景気に敏感な業種が集積しているような地域では回復の動きが感じられやすいであろうし、今回の景気持ち直しパターン7の下で特に影響を受けやすい業種、あるいはビジネスモデルとして成功している業態のウェイトが高い地域でも同様の傾向が生じやすいであろう8。
以下では、こうした点を踏まえ、本章の第1節では地域への景気回復の動きの波及について、総括的な点を確認した上で、地域別に見たマインド、生産、消費、雇用、その他の動きについて概観する。第2節では都市規模別に主に景況感の観点から概観する。