2.郊外の“街の高齢化”
(“街の高齢化”の進行)
都心への回帰の動きと足並みを揃えるようにして、都市周辺の郊外地域では変化が起きている。すなわち、郊外の常住人口の高齢化である。
時代の流れとともに世代が引き継がれ、あるいは様々な年代の人々の出入りがあれば、街は常に新たな活気を保ちながら発展していく。しかし、郊外では、かつて70,80年代に転入してきた世代が老年期へと入り始める中で、転入者数が減少し、さらに団塊ジュニア世代等の若年層が郊外から都心部へ転出していき、その帰結として高齢化が急速に進行したのである。
こうした傾向が顕著となった理由は、第4-2-4図のニュータウン造成にみられるように、郊外の住宅地としてほぼ同一時期に大規模開発により形成され、一斉に同一世代が入居したことにより、人口の年齢構成に偏りが生じたことである。
- 国土交通省「首都圏整備に関する年次報告」(2003年度)より転載。
- 表中のニュータウン名は省略している。
浦安については「浦安第二期」を、能見台については「京急釜利谷」を対象としている。鳩山については、入居開始年を用いている。
例えば首都圏郊外のあるニュータウンでは、第4-2-5図にあるように、2000年時点(実線棒グラフ)では、50歳代となっていたベビーブーム世代(男性)あるいはその直前の世代が際立って多く、その子ども世代と思われる10歳代後半から20歳代前半も多くなっており、特徴的な人口分布の形状をしていた。この歪んだ人口構成は、ある特定時期に急激な社会的変化を発生させることにもなる。例えば、ある一時期だけに急激な小中学校入学者の増加が見られるといった現象である。そして、ジュニア世代が一斉に成人し、就職・結婚を機に離家して都心等へ移転して行くと、親世代が残されることとなる。先ほどのニュータウンの例では、その動きが明瞭に確認できる。10年後の2010年時点(色塗り棒グラフ)では、ベビーブーム世代は60歳代前半に差し掛かっているが、10年前とほぼ同じ人口でそのまま大きな年齢集団として残っている一方、その子ども世代は20,30歳代となっているが、10年前に比べて著しく減少していることが分かる。また、10年前と現在の0~19歳の子どもの数を比較すると、大幅に減少していることも指摘できる。
- ( )内は2000年当時の年齢を表示。
- 自治体提供データより作成。
- 10月1日時点の人数。
- 上図の□の数値が2010年の値。
こうして、かつては若年夫婦や子どもで溢れていた街全体が今や“高齢化”し、首都圏の郊外地域の老年人口比率は高まらざるを得ない。かつて郊外に建設されたニュータウンは、一部で住民の高齢化や少子化、住宅の老朽化、商業施設等の衰退等が顕在化しつつあり、「オールドタウン化」しているとの指摘がある124。
こうした“街の高齢化”現象は、今後さらに拍車が掛かることが予想されている。例えば多摩ニュータウンのある八王子市、町田市、多摩市、稲城市を含む多摩中央部南地域では、東京都による将来人口予測(平成20年3月)によると、老年人口比率が2000年に13.7%、2005年には17.0%であったが、2015年には25.1%、2025年には実に27.9%に達すると推計されている。そして、そのうち75歳以上人口の比率は、2025年には17.7%にもなると見込まれている125。