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2.原発事故関連の事態の推移

(原子力発電所事故の発生と影響の波及)

3月11日の津波到達を受けて、東京電力福島第一原子力発電所で全交流電源が喪失して原子炉冷却に支障を来し、水素爆発や火災が発生して放射性物質が外部へ放出される事態となった。これに伴い、福島県内に避難区域等が設定されて住民が避難するに至った。また、地域の経済活動が停止するのみならず、その影響は農畜産品からの放射性物質の検出や風評被害、電力供給低下等様々な形で、全国各地の生産、小売消費、外食、観光・サービス等に及んだ。

例えば原子力発電所事故による風評は大きな影響を及ぼした。観光・サービス業では風評により東日本地域を中心に観光客が大きく減少し、特にいわゆるインバウンドの外国人の入込客数が激減したことが全国的に報告されている。また、農畜産物等食料品に関係する小売業、飲食サービス業等では、7月に流通牛肉からの放射性セシウムの検出が報道されて全国的に牛肉の購買量や消費量が減少するなど、風評被害が全国に及んだ。この風評被害については、改めて後述する。

(電力供給不足の発生)

原子力発電所の事故の発生に伴い東京電力の電力供給能力が著しく低下したことを受け、時間帯を区切って管内の系統変電所の需要毎に順次停電させる計画停電が、3月14日から随時実施されることとなった30。また、5月13日の電力需給緊急対策本部決定に基づき、東北・東京電力管内では、電力使用量を15%削減する取組が行われた。さらに、電力需要が高まる夏場を前にして、7月1日からは電気事業法第27条に基づく電力使用制限が行われ、9月9日まで継続された31。企業や家計による電力需要の抑制努力としては、企業での生産現場の操業日の変更、小売店での照明の節約や営業時間の見直し、家庭での節電等が行われた。こうした国民の努力が功を奏して、夏場の電力不足は大きな混乱もなく克服された。


30 計画停電は4月8日に「実施が原則」から「不実施が原則」の状態へと移行した。
31 関西電力管内でも7月20日に、全体として△10%以上を目途とした節電が要請されるなど、西日本でも取組が行われた。
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