第2章 第1節 1 アジアから日本への人の流れ(概況)

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(入国者数の動向)

世界全体から日本への入国者の推移(前年同期比)を法務省の「出入国管理統計」でみると、リーマンショックを契機とする世界的金融危機を背景に、2008年後半より徐々に減少し始め、2009年に入っても、5~6月に新型インフルエンザが流行したこともあって前年比マイナスが続いた。しかし、2009年の後半から回復を示し、2010年に入ってからは世界的な景気回復を背景に前年比で大幅な増加が続いている(第2-1-1図)。

第2-1-1図 入国者数の推移

第2-1-1図

(備考) 法務省「出入国管理統計」より作成。

このうち、アジアからの入国者をみると、その推移は世界全体からの入国者の推移と大きく変わらないが(第2-1-2図)、国・地域別では、2009年の夏以降、いち早くプラスに転じ、2010年に入ってからも概ね堅調に推移している中国からの入国者が特徴的である。これは、中国経済が世界的な金融危機の影響からいち早く脱し、世界の中でも高い経済成長を続けていることの表れといえる。また、受入れ国としての日本の側においても、中国からの訪日観光客を増やすために、2009年7月に中国からの訪日観光客に対する個人観光ビザの発給が開始され、さらに2010年7月には、その要件が「十分な経済力を有する者」から「一定の職業上の地位及び経済力を有する者」へと緩和されている。

第2-1-2図 アジア諸国 入国者数

第2-1-2図

(備考)

  1. 法務省「入国管理統計」より作成。

(入国目的別の動向)

次に、アジアからの入国者の訪日目的別の動向について、日本政府観光局「訪日外客統計」によりみてみよう(第2-1-3(1)図、第2-1-3(2)図)。

第2-1-3(1)図 アジアからの訪日観光客 前年比寄与度(四半期)
―他の国・地域に比べて減少幅が小幅に止まる中国からの観光客―

第2-1-3(1)図

第2-1-3(2)図 アジアからの訪日ビジネス客 前年比寄与度(四半期)

第2-1-3(2)図

(備考)

  1. JNTO「訪日外客統計」より作成。
  2. ASEANはタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム。
  3. その他アジアには、インド、イスラエルを含む。

観光もビジネスも2008年後半から落ち込んだ後、2009年後半から回復に転じ、2010年に入ってからは前年比で大幅増加となっている。なかでも中国からの訪日客の動向をみると、全体では前年比減少が続いている期間においても、ビジネス目的の訪日客の減少に比べ、観光目的の中国からの訪日客は減少が小幅に止まっているとの特徴がみられる。これは、ビジネス目的が景気変動の影響を受けやすいのに比べて、中国からの観光目的の訪日は景気の影響を受けにくいことを示唆している。その意味で、今後も、前述の個人観光ビザの発給開始や要件の緩和が、中国からの観光目的の訪日客を促す要因になることが期待される。

(アジアからの訪日客数の各国・地域シェア)

アジアからの訪日客のうち、韓国、台湾、中国、香港の4か国・地域からの訪日客が85%前後を占める。入国者総数でみると、4か国・地域の中では、韓国、台湾からのシェアが中国よりも多いが、韓国、台湾がシェアを低下させている一方、中国は逆にシェアを徐々に高めてきており、2009年には20%を超え、台湾(21.3%)と肩を並べるに至っている(第2-1-4(1)図)。中国のシェアは特に観光客で高まってきており、訪日観光客のシェアでは、韓国(2009年33.5%)、台湾(2009年26.5%)と比べるとまだ低いものの、ここ5年間では2倍以上(2005年6.4%→2009年14.0%)となっている(第2-1-4(2)図)。

第2-1-4(1)図 訪日客シェア(入国者総数)

第2-1-4(1)図

第2-1-4(2)図 訪日客シェア(観光客)
―シェアを高めるアジアにおける中国からの訪日観光客―

第2-1-4(2)図

(備考) JNTO「訪日外客統計」より作成。

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