『地域の経済2005』の公表にあたって
『地域の経済2005』は、地域経済の総合的な把握と問題点の指摘を目的として87年から毎年刊行されてきた『地域経済レポート』を引き継ぐものです。
地域の景況をみると、04年秋口から05年半ばにかけて、地域経済においてもいわゆる景気の踊り場的な状態に陥ることとなりましたが、夏ごろにその状態を脱却していることがおおむね確認され、05年秋口現在では、再び緩やかな回復軌道に乗っています。しかし未だに回復の遅れている地域もみられます。これは、地域の産業構成や輸出競争力が起因して、改善の速度に差があるためと考えられます。一方で、この間、相次ぐ台風の上陸、歴史に残る地震の被害など、自然災害が地域の景況に与える影響も懸念されました。災害に遭われた方に心からお見舞いを申し上げるとともに、政府の適切な対応の前提となるべく、今後も地域の経済動向をきめ細かく、注意深く分析してまいります。
『地域の経済2005』では、「高付加価値化を模索する地域経済」をテーマに、その時代における地域経済の構造的な変化を分析するとともに地域活性化のための様々な方策を検討しています。中でも、労働力人口が絶対的に減少することが見込まれる中で、地域経済はそれぞれに付加価値の高い産業を育てる、もしくは生み出すべく方向を転換して行く必要性があります。こうした問題意識に立って、とりわけこのレポートでは地域で進められているブランド化の動き、成長の見込まれるコンテンツ産業を地方で展開するための条件などの分析に注力しています。人口減少・少子高齢化が進む中で、地域がその個性を発揮していくためには、何をすべきなのか、行政はどのような支援を行うことができるのか、このような疑問に対する回答を、各地域の豊富な事例とデータに基づいて明らかにしています。
人口減少・少子高齢化はいずれの地域においても進行している問題です。しかし、その解決策は地域の抱えている事情によって様々であると考えられます。本報告書が地域活性化のための一助となれば幸いです。
2005年10月26日
内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
高橋 進