『地域の経済2003 -経済の好循環の波及に向けて-』の公表にあたって

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『地域の経済2003』は、国内各地域における経済動向の総合的な把握と問題点の指摘を目的として87年から毎年刊行されてきた『地域経済レポート』を引き継ぐものです。

2002年においては、輸出の増加とそれによる鉱工業生産の反転によって多くの地域において景気が下げ止まり、年央には持ち直しの動きがみられました。しかし、2002年後半から2003年前半にかけては、雇用情勢の厳しさを受けた消費の伸び悩みと輸出の増勢鈍化などから、各地域において持ち直しの動きが緩やかになるなど、やや足踏みをみせました。2003年半ばからは、輸出と設備投資の増加などにより景気は再び持ち直しつつあります。

2003年における状況を地域別にみると、持ち直しの動きがいろいろな所にみられる地域と、 それがまだ余りみられない地域があります。また、完全失業率が多くの地域で上昇するなど雇用情勢にも改善の遅れと同時に地域差がみられます。このような景気の地域差には、地域の産業構成と輸出競争力の違いがw現われている傾向もみられます。

2001年に刊行した『地域経済レポート2001』においては、「公共投資依存からの脱却と雇用の創出」をテーマとして取り上げました。2002年に刊行した『地域経済レポート2002』においては、サービス業を中心とする「新しい産業分野による地域市場の拡大」を取り上げました。この『地域の経済2003』においては、製造業を中心とする産業競争力の回復を通じた地域経済の再生を取り上げます。特に、他の先進国において地域の産業競争力の向上に効果を発揮している産業集積の一種である「クラスター」に着目しました。産業集積の効果はどのような方法によってどのようなところに現れているのか。このような点に着目し、各地域の事例とデータに基づいて分析することをねらいとしております。

いろいろな地域の集積をみると、危機意識と実行力を備えた人材及び集積内における連携が、地域の再生に大切な役割を果たしていることが分かりました。また、多様な産業が集積することによって競争とイノベーションが促進され、それを通じて地域における産業競争力と雇用力が高まるという効果を検証しております。地域経済の再生のために、集積と連携のプラスの効果を活用し地域の産業を活性化する動きが各地域に展開されることを期待いたします。

平成15年11月17日

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
谷内 満

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