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第2章 減速しつつも回復を続ける世界経済

第1節 景気が弱含み後退局面入りも懸念されるアメリカ

3.景気後退リスクへの政府、議会及び金融当局の対応

  住宅市場における調整の長期化・深刻化や、金融資本市場の混乱とそれによる実体経済の減速、景気後退懸念の高まりを受けて、アメリカ政府及び議会では、07年半ば以降、住宅市場の安定化策を数次にわたり発表するとともに、08年2月には緊急経済対策法を成立させ、減税等により個人消費や企業活動を刺激することで成長を下支えする方策を講じている。一方、FRB(連邦準備制度理事会)では、07年半ば以降、政策金利や公定歩合を引き下げる金融緩和策を累次実施しており、景気後退リスクに対して迅速な対応をとるという姿勢を鮮明にした。また、金融資本市場における流動性不足についても、短期金融市場への様々な資金供給策を行っている(第2-1-26表)。
  以下では、これまでにとられた財政金融政策について概観するとともに、その効果等について検討することとしたい。

サブプライム住宅ローンに問題に揺れる住宅市場への対策

   最初に、景気減速の要因となった住宅市場への直接の対応策をみてみよう。まず、アメリカ政府は、07年8月31日に、住宅ローン債務を保証するFHA(アメリカ連邦住宅局)によるローンの融資保険制度の拡充等を柱とした住宅保有者に対する支援策を発表した。同支援策は、リセット(金利の再設定)に伴う返済金の上昇により返済に窮した借手への救済を中心に、FHA保険付ローンへの借換えを可能とするなどの支援策(FHA-Secure)や、住宅保有者に対するカウンセリングの拡充(差押え回避イニシアチブ) 等を内容としている。
   しかし、その後もサブプライム住宅ローンの延滞率は上昇し、住宅差押え件数も増加したことなどから、政府は、12月6日に、民間団体による住宅ローン保有者に対する救済策を含めた包括的な対策を発表した。民間グループ(カウンセラー機関、サービサー機関、投資家、その他モーゲージ関連団体で構成)がまとめた「HOPE NOW プラン」では、一部のサブプライム住宅ローン返済困難者を対象に、ほかの住宅ローンへの借換えや返済金利上昇の5年間凍結を含むローン条件の見直しに関する対応策が示されている。ポールソン財務長官によれば、08〜09年にリセットを迎えると推定される約180万人のサブプライム住宅ローンの借手のうち、最大で約120万人が本プランにより救済が可能であるとしている。政府による対策としては、8月に発表したFHA-Secureについて、既存の住宅ローンの借換え後のローンも対象に追加することとし、08年末までに30万人以上を支援するとした。
  08年に入ってからは、住宅ローンの証券化の困難や金融機関の貸出基準の厳格化に起因する住宅市場の流動性低下に対応するため、2月13日に成立した緊急経済対策法の中で、これまで41万7,000ドルに設定されていたファニー・メイ(連邦住宅抵当金庫)、フレディ・マック(連邦住宅貸付公社)の住宅ローンの買取価格の限度額を、07年7月1日から08年12月31日の間に実行されるローンについては72万9,750ドルまで引き上げる措置を決定した。さらに、2月27日には、ファニー・メイ、フレディ・マックによる住宅ローン関連投資の上限額(ともに7,460億ドル)を3月1日で撤廃することが発表された。こうしたGSEs(政府支援機関)における買取単価上限額の引上げや投資上限額の撤廃が住宅市場の流動性の改善に寄与することが期待されている。
  さらに、議会においては、金融機関における住宅ローン元本の削減を条件に新たに借り換えられたローンへのFHA保証の付与や、新規住宅購入者に対する優遇税制措置、差押え住宅の買取に当たる州等への補助金や融資といった複数のサブプライム住宅ローン問題にかかる対策法案が審議されている。
  これら住宅市場安定化のための対策については、貸手、借手双方のモラルハザードを招く危険性はあるものの、住宅市場の調整が一層深刻化し、金融資本市場のさらなる変動や信用収縮を回避するのに効果があるものと期待される。


( 参考):アメリカ政府による住宅保有者への包括的な対策

(1)07年8月31日公表の対策

   ○FHA(アメリカ連邦住宅局)刷新法案(
Modernization Legislation
   FHAが融資保険の対象とする住宅ローンの頭金の基準の引下げ(現行:住宅販売価格の最低 3%→0でも可)及び住宅ローン保険額上限額の引上げ(現行:一件当たり362,790ドル→ 417,000ドル)等を実施。

   ○FHAによる新たな支援策(「FHA-Secure」)
   十分な信用を持っていても、金利見直しによるローン返済金額の上昇のため期日通りに返済ができない借手を支援するため、既存の住宅ローンの借換えローンもFHAの保険対象に追加。また、FHAは保険手数料をリスクに応じて設定できるよう見直しを実施。

   ○税制上の優遇策を議会に要請
  
住宅ローンを解約し住宅を売却せざるをえなくなった場合、金融機関によって住宅の売却価格を超える住宅ローンの部分が債権放棄されると、現行の税法ではその金額が課所税得として扱われるため、こうした場合でも債権放棄されたローンを課税所得として扱わないようにするための法案を
要請。(07年12月に法成立。)

   ○住宅差押え回避イニシアチブの始動
   ジャクソン住宅都市開発長官及びポールソン財務長官が、FHAやフレディ・マック、ファニー・メイ等に対して、住宅差押えに関するカウンセリングを拡充し、住宅所有者が困難に陥る前に最適な住宅ローンをみつけることを支援するように働きかける。

   ○大統領直属の作業部会の立ち上げ
   大統領直属の作業部会である「金融市場に関する作業部会」に対し、証券の格付け機関の役割と貸出手続きにおける格付けの活用状況や、証券化が住宅ローン市場と関連ビジネスに与えた変化等、住宅問題に関する広範な検証を指示。(08年3月に報告書発表。)

   ○その他の取組
   ・住宅ローンの貸手からの借手に対する情報開示の改善
   ・住宅ローン貸出基準の強化
   ・州単位での住宅ローン業者の包括的な登録制の検討
   ・住宅ローン業界内の不正や犯罪行為の追及
   ・大統領指揮による金融に関する教育強化のため取組

(2)0712月6日公表の対策

   1.HOPE NOW プラン(サブプライム住宅ローン救済策)
   ・「HOPE NOWプラン」は、民間グループであるHOPE NOW(注1)が取りまとめたサブプライム住宅ローン債務者への救済策。
   ・サブプライム住宅ローン(注2)の借手のうち、貸出し当初の低い金利のままであればローン返済が可能であるが金利 変更により返済困難に陥ってしまう者を対象に、借換えやローン条件の見直 しに関する「新たな業界横断の基準」を提示。
   ・対象者は、08〜09年に金利リセットを迎えると推定される約180万人のサブプライム住宅ローンの借手のうち、最大約120万の住宅保有者(HOPE NOW推計)。
   ・救済方法
   (i)既存のローンから新規民間ローンへの借換え
   (ii)既存ローンのアメリカ連邦住宅局保険ローン(「FHA-Secure」)への移行
   (iii)現在の返済金利を5年間凍結 
   ※アメリカ政府は、これらの措置は民間団体による自主的な措置であり、納税者の負担や政府の強制を伴うものではないことを強調。
   (注1)「HOPE NOW」とは、アメリカ財務省、住宅都市開発省の呼びかけの下で設立された民間グループのこと。カウンセラー機関、サービサー機関、投資家、その他モーゲージ関連団体で構成。
   (注2)サブプライム住宅ローンは、ARM(ハイブリッド変動金利)型のものが多く、貸出し当初は低く抑えられた固定金利が適用されるが、2〜3年に市場金利にプレミアムを上乗せした変動金利に変更されるため返済額が急増する。

   2.その他の対応策
   (i)FHAによる取組(FHA-Secure)既存の住宅ローンの借り換え後のローンもFHAの保険対象に追加。FHAでは、08年末までに30万人以上支援することを見込んでいる。
   (ii) HOPE NOWの召集とHOPE NOWによる電話・ヘルプラインの開始
   (iii) 住宅ローン市場の透明性、信頼性、公正性の向上に向けた対応
   (iv) 議会に対する法案成立に向けた要請FHAのローン保険制度の拡充を目的としたFHA刷新法案や、住宅ローンの債務免除額に対し免税措置を講じる税制優遇策等を議会に要請。

FRBは政策金利の大幅な利下げを実施

   金融政策の面では、サブプライム住宅ローン問題に対する懸念の高まりから金融資本市場において株価下落等の変動が生じたことを受け、07年8月17日に緊急に公表されたFOMC(連邦公開市場委員会)声明では「成長の下振れリスクが目にみえる形で高まった」とし、これまで政策金利より1.0%ポイント高い水準に保たれていた公定歩合を0.5%ポイント引き下げ、5.75%にするなどの政策変更が行われ、市場への流動性供給が強化された。
  しかし、その後も金融資本市場の正常化が進まず、サブプライム住宅ローン問題がさらに深刻化するなど、景気の下方リスクが高まったため、9月に開催されたFOMCでは、06年8月以来5.25%に据え置かれてきた政策金利(フェデラル・ファンド・レート(FF金利))を0.5%ポイント引き下げ、4.75%にすることが決定された(公定歩合も0.5%ポイント引下げ)(第2-1-27図)。以後、政策金利及び公定歩合の引下げが続いている。
  特に08年に入ってからは、世界的な株価急落等もあったことから、1月21日に緊急にFOMCが開催され、「経済の見通しの悪化と成長に対する下振れリスクが増大」し、「より広範な金融市場の状況は悪化を続け」ているとして、政策金利を0.75%ポイントと大幅に引き下げる決定がなされた。さらに、直後の1月29、30日の定例会合においても、0.50%ポイント引き下げる決定がなされたことから、10日弱の間において政策金利が合計1.25%ポイント引き下げられるという歴史的にも迅速な利下げが行われた。3月及び4月におけるFOMCでも政策金利は引き下げられ、FF金利は2.00%(07年9月の利下げ以降累計で3.25%ポイントの利下げ)、公定歩合は2.25%となった。

現在の政策金利水準をどう評価するか

   以上のように、07年9月以降、景気の下振れリスクに対処した政策金利の引下げ局面が続いた。しかしながら、FF金利の目標水準は、実質金利ではゼロ近傍又はマイナスとなる水準に達しており、既に相当緩和的な状況にあることや、08年3月半ば以降は株価等が比較的安定していることなどから、市場ではFOMCが利下げを休止するとの見方も出ている。
  先行きについては、アメリカの景気後退局面入りの懸念がある中、住宅等の資産価格の下落等による実体経済への悪影響が懸念される一方、現在の金融緩和的な状況が今後の物価上昇につながるおそれもある。したがって、FRBは、最大限の雇用の確保と物価の安定という二つの目的をどのように達成するかという難しい判断を迫られており、08年4月の利下げにおける際のFOMC議事録からも、FOMCメンバーが、二つの目的の間で微妙な判断を迫られたことが明らかとなっている。
  ところで、07年9月以降の利下げによって実現された現在の政策金利水準はどう評価できるのであろうか。実際のFF金利の推移とテイラー・ルール(8) に基づき推計した政策金利水準を比較すると、おおむね同じような動きとなっているものの、08年1〜3月期においては、実際のFF金利の水準はかなり低いものとなっている(第2-1-28図)。したがって、FRBは、景気後退リスクの大きさ、特に、戦後最大ともいわれる金融危機に対応して、テイラー・ルール等で示される以上に迅速に金融緩和を行い、景気後退が深刻なものとなることを予防しようと試みてきたものと解される(9) 。

短期金融市場への流動性供給

  FRBは、大幅な利下げと平行して、サブプライム住宅ローン問題に端を発した短期金融市場における流動性不足を解消するため、様々な資金供給策を実施している(第2-1-29表)。
  07年12月12日には、5中央銀行(FRB、ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行)、カナダ銀行、スイス国民銀行)による短期金融市場への資金供給に係る協調措置の一環として、入札形式によるターム物貸出制度(Term Auction Facility:TAF)が臨時に設けられた。同制度は、おおむね健全な預金金融機関及び連邦銀行窓口でプライマリー貸出しを受けられる金融機関のすべてが利用可能となっており、社債や資産担保証券等の広範な担保を受け入れることで効果的な流動性供給を行うものである。また、従来からの窓口貸出については、それを利用することで経営に問題があるとの風評が生じることが懸念されたため利用が少なかったことを考慮して、TAFでは機関名を公表しない入札形式にするよう工夫された。
  08年に入ってから、短期金融市場が再び引き締まったことを受け、3月11日に、5中央銀行が協調して市場への資金供給を行う旨を再び発表した。この中で、FRBは、ターム物国債貸出制度(Term Securities Lending Facility:TSLF)を新たに導入した。同制度では、プライマリー・ディーラー(銀行及び証券ブローカー・ディーラー)に対し、適格債券を担保として、最大2,000億ドルの国債を貸し出すこと(貸出期間28日間。通常の国債貸出制度は翌日物。)としており、担保には連邦機関債、連邦機関発行のMBS(住宅ローン担保証券)、トリプルA格の民間の住宅ローン担保証券も含めることとした。同制度を活用することにより、プライマリー・ディーラーは国債を担保として資金調達することが可能となった。
  さらに、3月16日には、FRBは、市場の流動性を高め秩序ある金融市場の機能を促進することを目的として、ニューヨーク連邦銀行(NY連銀)に対し、プライマリー・ディーラーを対象とした公定歩合によるオーバーナイト貸付制度(Primary Dealers Credit Facility:PDCF)の創設を許可した。これは、NY連銀が、これまで連邦銀行から貸出を受けることができなかったプライマリー・ディーラーに対し、投資適格債券を担保(TSLFより担保は広範囲)として、公定歩合と同じ金利で貸付を行う制度であり、貸付期間はオーバーナイトとされている。
  また、08年3月には、アメリカの主要投資銀行の一つが資金繰りの悪化等に伴い、大手商業銀行に売却されるという事態も発生し、本件の買収に当たってはNY連銀が290億ドルの特別融資を行った(10) 。FRBによるこれまでの流動性供給策や上述の資金繰りが悪化した主要投資銀行の救済等が市場で評価されたことなどから、市場では、金融危機の最悪期は脱したとの見方が広がった。このため、3月半ば以降、ユーロドル・スプレッドや社債スプレッドは縮小傾向にあり、株価もこれまでの低下傾向から反転するなど、いくらか改善したようにみえる。しかしながら、住宅市場の調整は深刻化しており、証券化商品の価格動向や金融機関の損失の動向はなお見極め難いことから、金融資本市場の正常化にはしばらく時間がかかるものと考えられる。

緊急経済対策法の成立

 政府による住宅市場の安定化策やFRBの金融緩和策等にもかかわらず、08年に入ってからは実体経済の悪化が顕著になり、市場や民間機関において景気後退への懸念が高まった。
  こうしたことから、2月13日に成立した緊急経済対策法(Economic Stimulus Act of 2008)には、個人所得税を還付する戻し減税や、企業の設備投資を促すための税制優遇措置を柱とする総額1,680億ドル(GDP比約1.2%)規模の財政出動が盛り込まれた。主な内容としては、まず、個人消費を促進するため、迅速かつ直接的な手段として、所得税減税(戻し減税)を行うこととしている。課税所得7万5千ドル以下の単身者に対し最大600ドル、課税所得15万ドル以下の夫婦世帯に対し最大1,200ドルの課税所得をそれぞれ還付することとし(11) 、さらに、納税者の子供一人当たりについて300ドルの追加還付も実施するなどとしている。また、企業における設備投資の促進に資する税制優遇措置として、08年に行った新規の設備投資について、その費用の半額を追加控除できるように特別償却制度を設け、併せて中小企業に対する投資減税措置を行うなどとしている。ほかに、政府系金融機関における住宅ローン債権買取要件の緩和等の住宅市場対策も含まれている。

個人所得減税の効果

   総額1,680億ドル規模(08年は1,520億ドル)の減税のうち、1,170億ドル(08年は1,070億ドル)とその大半が充てられているのが個人所得税の戻し減税措置である。IRS(内国歳入庁)による個人への還付は4月末より開始(銀行振込が4月28日、小切手の送付が5月9日)されており、7月中旬には還付が基本的には終了する予定である(12) 。このため、08年4〜6月期、7〜9月期における個人所得の増加と、それに伴う年半ば以降の消費支出の押上げが期待される。

コラム:個人への戻し減税の効果

  個人への戻し減税は、どの程度経済成長に影響を与えるのであろうか。その効果は、その時々の景気情勢、減税措置の性格や対象範囲、その他付随して打ち出された政策内容等の様々な条件の違いによって結果が異なりうる。今回と同様の個人への戻し減税措置は、アメリカでは過去において、1975年、2001年及び2003年に実施されている(表1)。実証研究によれば一般的に戻し減税措置は消費刺激効果を持ったとされているものの、払戻し額のうち、短期的に消費に回された割合については、およそ1/3〜2/3と、推計に幅がある(注1)
  例えば、75年の戻し減税措置(Tax Reduction Act of 1975)では、一時的な税金の払戻し1ドル当たりに対して、消費支出を12〜24セント程度増加させたとされており(注2)、01年の戻し減税措置(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001)では、受領した最初の四半期に20〜40%程度が、次の四半期までに2/3程度が消費に回されたとされている(注3)。また、03年の戻し減税措置(Jobs and Growth Tax Relief Reconciliation Act of 2003)では、子女扶養税額控除の増額に伴う還付から2四半期間における限界消費性向は0.3程度であったとされている(注4)
  01年の戻し減税措置については、半恒久的(10年間の時限措置)な大型減税の一部として行われており、かつ、当時の経済情勢においては住宅市場が堅調であり、家計は現在ほど債務負担を抱えている状況ではなかった。さらに、自動車メーカーによる大々的なインセンティヴ販売も実施されていた。一方、今回においては、一時的な減税措置であることに加えて、家計では資産価格の低下や債務の増加等からバランスシートが悪化していることから、消費よりも消費以外の貯蓄や負債の返済に回る可能性が大きく(注5)、消費支出への効果は小さいとする見方がある。しかし、過去と比較し減税規模が大きいことや、限界消費性向が高いとされる低・中所得者層が主たる対象となっていることから、ある程度の消費支出が見込まれ、景気を押し上げる効果が期待できるとの見方もある(注6)
  仮に今回の戻し減税措置の効果について、例えば、6月から9月までの4か月の間において均等の効果をもたらすとのおおまかな仮定を置いた上で計算してみると、一時的な減税措置であることにかんがみ、仮にその2割が消費されるとする控えめな前提でも、GDP成長率寄与度にして4〜6月期には0.6%ポイント程度、7〜9月期には1.2%ポイント程度の押上げ効果を見込むことができる(ただし、効果が4か月間に集中するとしたこの試算では、10〜12月期は反動でマイナス寄与となる。)(図2,表1
 戻し減税が、個人消費を促すことで08年半ばの経済成長を一定程度押し上げ、景気を下支えしている間に、これまでの金融政策の効果が顕在化し、また、金融機関の資本増強策により金融資本市場が落ち着いていけば、08年後半以降、アメリカ経済は徐々に持ち直していくことが見込まれる。ただし、一回限りの戻し減税による押上げ効果は、その規模と比較して限定的であると考えられ、また、効果が一時的なものとなることにより、その反動が生じる懸念もある。このため、戻し減税の押上げ効果が薄れていくと考えられる08年後半以降の金融資本市場や景気の動きには注視が必要である。


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