第1章 第1節 1 記録的な速さで減少した生産

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第1節 企業を取り巻く状況の変化

1 記録的な速さで減少した生産

(全国に広がった生産の急減)

地域別の生産動向を鉱工業生産指数の変化率によってみてみると、2008年上期(1~6月期)には、すでに原油・原材料価格の高騰、輸出の緩やかな減少等、生産を下押しする力が広がり、多くの地域では生産が減少に転じ、2008年7~9月期には、全ての地域で減少となっていた。そこに、リーマンショック以降の世界的な景気悪化によって、輸出の減少に拍車がかかったこと等から、10~12月期には、全ての地域で生産が極めて大幅な落ち込みを示した。しかし、国内外での需要収縮が生産の落ち込み以上の速いテンポで進んだことから、東北、四国、九州では、電子部品・デバイスを中心に在庫の急速な積み上がりがみられた。在庫圧縮のため、一時生産ラインを止めて生産水準を大幅に抑える措置をとった企業も増加し、2009年1~3月期には、全ての地域において生産の減少のテンポが更に加速した(第1-1-1図)。

第1-1-1図 鉱工業生産指数 業種別寄与度の推移(2008年10~12月期→2009年1~3月期)
―全ての地域で生産が極めて大幅に減少―

第1-1-1図

(備考) 1. 経済産業省、各経済産業局、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局「鉱工業指数」により作成。
2. 地域区分はB。
3. 電子部品・デバイスにおいて、北海道と四国は電気機械の生産指数を用いて作成。
4. 2005年基準。

各地域において、短期間にどの程度、生産が減少したかをみるため、生産水準が最も落ち込んだ2009年2月の生産水準を、生産が急速に減少する直前の2008年9月のそれと比較してみると、東海では59.8%、九州でも63.6%となり、この5か月間に4割前後の落ち込みをしたことが分かる(第1-1-2図)。

第1-1-2図 鉱工業生産指数の水準比較(2008年9月と2009年2月の比較)

第1-1-2図

(備考) 経済産業省、各経済産業局、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局「鉱工業指数」により作成。

このように生産が極めて大幅に減少するなかで、一時帰休を実施する企業や、計画していた工場の新設や拡充を見送る企業が各地で数多く出てきた。なかには、輸出の急減や国内需要の更なる縮小を背景に、事業規模の大幅縮小を余儀なくされ、不採算部門の廃止や、国内の生産拠点の統廃合に踏み切る大手・中堅企業もみられた。閉鎖が決定された工場の中には、長年にわたり操業を続け、地元中小企業との取引関係が深い工場も少なくなく、雇用面も含め、地域経済に深刻な影響を与えることとなった。

(各地域で高まっていた輸送機械への依存度)

短期間での極めて大幅な生産の減少が多くの地域でみられた要因の一つとして、従来に比べ、ほぼ全ての地域が自動車の生産動向の影響を受けやすい経済構造になっていたことが挙げられる。

経済産業省「工業統計調査」を用いて、製造業全体の付加価値生産に占める輸送機械の割合を日本全体としてみると、2000年には11.2%であったが、輸送機械の生産がピークとなっていた2007年には16.8%にまで高まっていた(第1-1-3図)。同じ期間について、地域別にみると、北海道以外の全ての地域でその割合が高まっている。特に、東海は、複数の大手自動車メーカーの発祥の地であるなど、歴史的にも輸送機械の集積が高かったこともあり、2000年代に入り、その割合をさらに10%ポイント程度高め、2007年には37.3%となっている。中国や九州では、上昇幅は東海よりはかなり小さいものの、2007年にはそれぞれ16.4%、12.9%となっている。

第1-1-3図 製造業の付加価値額に占める輸送機械の割合
―東海を中心にほぼ全ての地域で輸送機械への依存度が高まる―

第1-1-3図

(備考) 1. 経済産業省「工業統計調査」より作成。
2. 従業者10人以上の事業所における値。
3. 全国には沖縄も含む。沖縄の付加価値額に占める輸送機械の割合は、2007年0.9%、2000年は数値なし。

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