第1章 第2節 集積メリットの活用を模索する各地の実例 10.

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地域クラスターの所在地 沖縄

(この地域の特徴)

  • * 健康食品に対するニーズの高まりと「沖縄ブランド」により成長
  • * 産学連携による積極的な製品開発

沖縄県の健康食品関係の総売上高の推移

(沖縄の伝統と食材を生かし発展する健康食品産業)

沖縄県には、2003年3月時点において41社の健康食品企業がある(沖縄県健康食品産業協議会会員企業)。沖縄は薬草の宝庫であり、古くからその効能等が伝承されてきた。沖縄の人々の平均寿命が長いことも、薬草を含む食材の効能によるところが大きいと考えられている。このように多彩な食材と長寿のイメージを背景に、多くの健康食品関連企業が立地している。

健康食品の内訳としては、ウコン茶やグアバ茶等の健康飲料、ウコン類、もろみ酢、モズク類など様々である。こうした健康食品の売上高は、2002年度において約130億円に達する(上表)。近年の健康食品関連市場の成長につれて、事業者数、商品数、売上高ともに増加している。

沖縄地域では、沖縄総合事務局経済産業部によって「OKINAWA 型産業振興プロジェクト」が進められている。これは、「情報関連」「加工交易」「環境関連」そして「健康関連産業」の4分野を対象に、産学官連携の構築や参加企業に対する研究開発の支援などによって産業クラスターの形成を目指すもので、経済産業省「産業クラスター計画」の一つになっている。また、(財)沖縄県産業振興公社は、専門コーディネーターの活動を通じて企業間や産学官の連携の促進に取り組んでいる。

(沖縄産素材へのこだわりと積極的な研究開発―沖縄発酵化学の例)

健康食品関連企業の一つに(株)沖縄発酵化学がある。アガリクス関連商品、ウコン関連商品等の健康食品を製造・販売する会社で、沖縄県糸満市にある。県内と県外への出荷がおよそ半々で、各量販店、沖縄の物産店、通信販売などの販路がある。売上高をみると、2000年度に21億円、2001年度に25億円、2002年度に32億円と年々増加している。

沖縄発酵化学の敷地内で栽培されているウコン

経営が軌道に乗るきっかけは、91年にアガリクス茸の大量栽培技術を確立したこと、同年地域企業グループに参加しグループ企業のスーパーと商品販売について連携するようになったことである。高齢社会化と生活習慣病の増加による健康に対する関心の高まりも売上増加の要素となっている。

沖縄発酵化学は、沖縄産の原料にこだわった商品づくりをしている。国外などの素材を使わず、沖縄の農家に素材の栽培を委託し、それを使って製造している。これは、顧客の沖縄産に対する評価と信頼を大切にし、沖縄産による「沖縄ブランド」を確立してゆくことが大切と考えているからである。

そして、研究開発にも力を入れている。設立当初から高い技術を持った研究スタッフを積極的に採用している。琉球大学を始め、東京大学や九州大学と基礎研究について連携しており、また県外の国内健康食品メーカーとも共同研究を進めている。

(「沖縄ブランド」の確立に向けて)

栽培技術の向上で、製品の安全性が高まり大量栽培が可能となったアガリクス茸

沖縄発酵化学の例からも分かるように、沖縄の健康食品産業は近年大きく成長し、今では沖縄の主要産業の一つとなっている。こうした健康食品産業の発展は、それぞれの健康食品関連企業の経営と研究開発の努力によるところが大きい。これに加え、健康に対する関心の高まりと沖縄の長寿イメージなどによる効果が背景にあるとみられている。ところが、95年に全国で4番目に長かった沖縄県の男性平均寿命は、2000年には26番目に急落している(22)。沖縄県の健康食品産業は、このことを沖縄の長寿イメージを損なうものとして危機感を持って受け止めている。

これまでの成長を一過性のブームに終わらせないためにも、健康食品産業の発展を長期的に支える仕組みが必要とみられている。沖縄発酵化学の例にあるように、産学連携による製品の品質改善や安全性の向上、そして消費者の信頼を得るための「沖縄ブランド」確立に向けた取組なども、有効な方策と考えられている。

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