平成10年

年次世界経済報告

アジア通貨・金融危機後の世界経済

平成10年11月20日

経済企画庁


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はじめに

97年7月のタイ・バーツ危機に端を発するアジア通貨・金融危機は,域内の経済収縮をもたらしただけでなく,世界経済全体にも大きな影響を及ぼし,ロシアや中南米諸国等の為替・金融市場にまで動揺が広がった。アメリカでは,91年3月からの長期にわたる景気拡大局面にあるが,98年8月末に株価が急落し,その後も一進一退を繰り返すなかで,先行きに対する不透明感が広がり始めている。

このように不安定化した世界経済には様々なリスクが存在しており,全体としてデフレ圧力が高まりつつある。こうした中で,世界的同時不況を防止するための政策の在り方などについて様々な議論がなされている。また,急激かつ大量の資本移動がアジア通貨・金融危機の直接の引き金となったことなどから,国際的な資本移動の拡大が世界経済に与える影響に関しても種々の議論がなされている。これらの議論を整理することは,今後の世界経済の展望を考える上でも有益であろう。

次に,雇用問題に目を転ずると,アメリカ,イギリス,オランダなどで失業率の低下がみられる一方,ドイツ,フランス,イタリアなどの大陸ヨーロッパ諸国では二桁の失業率が続き,景気が回復しているにもかかわらず,雇用の伸びは緩慢である。このように欧米において雇用情勢の二極化が一段と進んでいる。この背後には各国の労働市場の柔軟性,それをとりまく制度など様々な要因があると考えられる。また,ヨーロッパでは99年1月に始まる通貨統合と労働市場改革との関連という興味深い論点もある。さらに,東アジアの雇用情勢は通貨・金融危機後大幅に悪化しており,今後,失業保険などの社会的セーフティ・ネットを整備することなどの必要性が指摘されている。

本年度の世界経済白書は,このような問題意識に沿って,諸外国の事例の紹介と分析を行っている。第1章で世界経済情勢の年間レビューを行い,地域毎に主要なトピックをとり上げる。第2章では,アジア通貨・金融危機とそれが世界経済に及ぼした影響について分析する。第3章では,各国の労働市場の動向や,そこで行われている改革の進展状況などについてみる。


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