平成5年

年次世界経済報告

構造変革に挑戦する世界経済

平成5年12月10日

経済企画庁


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第2章 持続的成長及び市場経済化の条件

第4節 明るさのみられる中欧

中・東欧諸国では,市場経済移行のための改革に踏み出した直後,現在のロシア同様,高インフレ,生産の大幅な低下に直面し,対外面でも,旧コメコン貿易の崩壊が経済に大きな影響を与えた。実質GDP成長率は,いわゆるショック療法を実施した90年,91年に各国で10%を超える落ち込みを示した。しかしながら,改革から3年余りを経た92年半ばより,ポーランド等の中欧諸国では,物価の落ち着き,生産の下げ止まりの動きなど,明るい面もみられるようになっている。ポーランドでは92年に中・東欧諸国の中で改革後初めてプラス成長を記録した。本節では,このような明るい面が出てきた背景について,輸出と民間部門の役割を中心に分析するとともに,本格的な回復のために残された課題について検討する。

1 92年から93年前半の状況

中欧諸国(ポーランド,旧チェコ・スロバキア,ハンガリー)では,92年に入り生産回復等の明るい面もみられるようになっているものの,産業構造の転換に伴う失業等の問題が現れてきている。一方で,ルーマニア,ブルガリアでは依然,経済の混迷が続いている(第2-4-1表)。

生産面をみると,ポーランドでは92年後半に入り,ハンガリーでは93年に入り,回復が見られる。他方,連邦解体の影響から旧チェコ・スロバキアでは回復の遅れが懸念され,改革後発国のルーマニア,ブルガリアでは大幅な滅少が続いている。

雇用面をみると,チェコでは,失業率が低水準で推移しているものの,他国では,失業率の上昇が続いている。これに伴う失業給付等の増加が財政赤字拡大の一因となっている。

物価面をみると,中欧諸国では,依然年率2桁台の上昇が見られるものの,当初の高インフレからは収まってきている。他方,ルーマニアでは,改革開飴が遅れたとはいえ一貫して年率3桁台の上昇率が続いている。

対外面をみると,貿易収支は,92年前半に好調だった中欧諸国でも,後半以降赤字に転じている。特に,農業産品輸出の多いハンガリーでは,92年秋の歴史的な大早魁の影響を受けた。また,91年まで好調に伸びた西側先進国への輸出も,EC諸国の景気低迷,貿易摩擦の発生等から伸び悩みがみられている。

財政面をみると財政赤字の対GDP比の上昇傾向が見られる。各国は,IMF等との融資交渉で示された財政赤字対GDP比率を達成する必要もあり,財政赤字削減を目指した予算編成や種々の税制改革(付加価値税導入等)を行っているが,今後も失業の増大等による社会保障関係支出の一層の増加から,実現は難しいと思われる国もある。このような,財政赤字の増大は,物価上昇圧力になる恐れもあり,今後の木安定要因の一つである。


(物価上昇が続くルーマニア)

中・東欧諸国でみられた改革直後の高インフレの多くは,抑制されていたインフレが価格自由化でオープン化したものだといえる。しかし,中欧諸国が初期の高インフレの抑制にほぼ成功しているのに対し,ルーマニアでは,依然年率3桁台の物価上昇が続いている。この要因としては,以下の点が挙げられる。

①段階的価格自由化

旧チェコ・スロバキア等で急激な価格自由化が行われたのに対し,ルーマニアでは,国内の独占的産業構造の下での価格自由化は無秩序な価格づけを生み出すと考えられたことなどから段階的自由化が行われた(図1)。その結果,何らかの規制下にある価格は92年末時点でも総売上の60~70%を占めているといわれる。しかし,こうした断続的な価格自由化は,長期的に期待インフレ率を高める結果となったとみられる。更に,為替変動の価格への反映を政策的に規制したことが,価格調整の波及を遅らせ,特に中間財を扱う企業の収益を悪化させることになった。これは,補助金圧力や企業間債務を増大させるという形で,インフレを悪化させている。また,将来的には予測されるコスト上昇を見込んだ価格上昇を引き起こすことにつながる。

②企業間債務の累積

インフレ抑制のための銀行貸出抑制,高金利政策が採られた結果,企業間債務が拡大した。このため,企業間債務解消,企業救済のための補助金支出や低利融資(多くは政治圧力による)が,インフレ圧力を生むとともに,厳格な財務規律の実現を妨げている。

③断続的な通貨切下げ

ポーランド,旧チェコ・スロバキアでは,為替レートの大幅引下げと固定によって,為替切下げ圧力と期待インフレのスパイラルは回避された。一方ルーマニアでは,当初の切下げが小さくスパイラル回避措置はうまく機能しなかった。断続的価格自由化による期待インフレの高まりにより外貨需要が増加し,その圧力は,一層の為替レート引下げと新しい価格調整を不可避とし,更なる高インフレ期待を生むといった悪循環を引き起こすことになった(図2)。


2 生産回復における,輸出と民間部門の働き

中・東欧諸国の改革で実施された,価格自由化に伴うインフレを抑制するための安定化政策は,国内需要の大幅な落ち込みを招くものであった。内需の減少に伴う生産の減少を最小限にとどめるためには,外需の役割が重要であり,もともと輸出依存度の高い産業構造である中・東欧諸国にとり,外需の役割は特に重要である。しかし,①貿易自由化による国際市場での競争,②91年のコメコン解体による貿易体制の転換等様々な予想を上回る,あるいは予想外のサプライショックが起こった。以下では,上記のようなサプライショックが各国の貿易動向にどの様な変化をもたらしたのがを検討し,その変化が生産回復にどう結びついていったのかを分析する。

(1) 先進国向け輸出の増加と,労働集約型産業商品輸出の増加

改革以来の貿易自由化とコメコンの解体は,中・東欧諸国にとって厳しい産業構造の転換を強いるものである。従来コメコン内で国際分業下にあった機械等が西側市場では競争力を持たず,特にコメコン向け重工業に依存していた旧チェコ・スロバキア等では輸出全体も大きく減少した。比較的コメコン依存度が低いどされたハンガリーにおいてでさえ,輸出比率の高い機械類の生産減の6割近く,鉱工業全体でも1/3近く力1ルーブル建て輸出減にょるものであり,コメコン解体のショックが大きがったことがうががえる(第2-4-2表)。しかし,労働集約型の中間財,消費財は,西側市場の中でも競争カがあり,西側先進国に貿易相手国をシフトさせることにより,中欧諸国では,むしろ輸出の増加を実現している。ポーランドでは,92年の輸出は滅少しているものの,90,91年は先進国を中心に輸出は増加を示している。旧チェコ・スロバキアでも92年から輸出は増加に転じており,ハンガリーでも輸出は増加を示している(第2-4-3図)。

(輸出構造の変化)

これに伴い,各国の輸出相手国構成をみると,コメコン解体後は多くの国で,旧コメコン特に旧ソ連のシェアが低下し,かわって西側特にEC諸国のシェアが上昇している(第2-4-4図)。

一方,輸出品目構成の変化をみると,①機械・設備のシェアが落ち,②中間財・消費財,③食料等のシェアが上昇している(第2-4-5図)。これは,特に西側先進国向けでの②のシェア上昇,社会主義国向けでの①のシェアの落ち込みと③のシェアの上昇を反映している。一般に市場経済移行前から旧共産圏の国々は既存設備の老朽化と投下資金の不足,技術の遅れのため,西側先進国との貿易では,付加価値の低い商品や労働集約的産業の商品に特化する傾向にあり,88年,89年の対先進国輸出において,②が既にかなりのシェアを占めていた。92年には,更にその傾向が強まり,特にポーラジドについては,輸出品目における機械工業からの脱却,多様化が進んでいる。

(輸出の重要性)

従来の機械・設備等から労働集約的産業に輸出の品目のシフトがみられたものの,改革当初においては,特に外貨獲得のため輸出収入の増大が必要であった。逆に,輸出を拡大できない場合は,外貨の不足から,生産に必要な原燃料,資材等の輸入を困難にし,国内生産を低下させ,それがまた,輸出減退に通じるといった悪循環を招くことになる。中欧諸国では,輸出収入等により外貨を獲得し,輸入を増加させ国内供給の不足を補うとともに,生産を支える産業用資材を確保できたのである。また,品質の高い豊富な輸入消費財の流通が,改革が進めば生活水準が上がるという希望を市民に抱かせたという側面もあった。

(2) 中欧における生産回復の動向

以上のような,輸出拡大,その構成の変化は,国内の産業再編,生産の回復とどう関係しているのか。ここでは,ポーランドとハンガリーを取り上げて検討する。

(各国の輸出と生産の関係)

まず,工業の部門別輸出の動向をみると,ポーランドでは,窯業,紙,金属(鉄,非鉄)の3部門で大きく増加し,機械類で滅少している。一方,ハンガリーでは,91年までは,ほとんどの分野で減少しているものの,92年に入り,衣料,木材・紙等の軽工業や建築資材で増加がみられる。前述したように,中間財・消費財等で輸出が増加しているのが確かめられる(第2-4-6図)。

一方,部門別生産の動向をみると,ポーランドでは,①食料品,木材・紙,窯業・ガラス等は,91年から92年にかけて下げ止まりからプラスに転じ,工業全体の回復の大部分がこの部門で起きていること,②一方,機械類は92年に入り,やや回復しているが,91年は大きく減少しており,工業全体の回復の足かせとなっている。ハンガリーは,92年ではほとんどの部門でマイナスの寄与を示しているものの,93年に入ると,ポーランドと同様に,木材・紙,衣料等で生産の回復がみられる(第2-4-7表)。

以上のように,輸出が伸びている部門で生産も回復に向かう傾向にある。

(生産回復における民間企業の役割)

このように生産を回復してきている部門で,民間企業はどのような役割を果たしているかを,ポーランドを例にとってみることとする。

各産業部門の生産の伸び率を,国営企業と民間企業それぞれの寄与度に分けてみると,①全産業部門で民間企業の寄与度はプラスだが国営企業のそれはマイナスとなっている。また,②輸出・生産ともに増加している木材・紙,衣料,窯業・ガラスでは,国営企業のマイナスが比較的小さい上,民間企業の寄与が大きい(第2-4-8図)。

一方,各産業別の労働生産性を国営企業と民間企業別に対比してみると,①金属,化学等では,国営企業の生産性の方が高いのに対し,②木材・紙,衣料等では両者にほとんど差がないことがわかる(第2-4-9図)。国営企業との相対関係でみれば民間企業の生産性は後者の方が前者より高いのである。このような相違は,産業の資本集約度の相違とそれに伴う参入障壁の差に原因があると考えられる。すなわち,一般に金属・化学等の重厚長大型産業は,その立ち上がり時に多くの資本が必要であり,参入障壁が高い。他方,資本集約度の低い産業では,少ない資本でも労働生産性を高めることができることから,参入障壁が低く,新たな民間企業の台頭が容易になっていると考えられる。民間企業の参入の大部分が,資本集約度が低いと思われる軽工業部門に集中し,これが競争を促している(第2-4-10表)。

以上から,中欧諸国の中で,最初に生産回復をみせているポーランドでは,民間企業の台頭が生産回復に重要な役割を演じているといえる。ポーランド,チェコにおける民間部門の規模をみてみるとポーランドでは,GDPに占める民間部門の割合が92年末で,45~50%を占め,旧体制下で比較的徹底した国営化が行われたチェコでも92年末で19.5%を占めるなど,民間部門の成長がみられる(第2-4-11表)。このような民間部門が労働集約度の高い分野へ新たに進出し,生産増や経済環境の競争化にも貢献しているのである。

(3) 工業部門の相対価格の変化

ここで,改革以降の工業の部門別の相対価格の変化をみると(第2-4-12図),価格自由化,貿易自由化により,コメコン内の人為的な国際分業下でかつ統制下にあった従来の価格休系は国際価格体系に近づく過程で大きく変化している。相対価格が高まっている部門ではコメコン下における評価よりも相対的に高い評価を得つつある部門といえ,当該産業の企業収益は改善し,新規参入,生産拡大のインセンティブが存在していると考えられる。逆に相対価格が低下している部門は,従来のコメコン内の価格体系の中では相対的に高く評価されていたものの,国際価格体系の中では,競争力は低い部門であるといえる。ポーランドでは,金属,非金属鉱物,木材・紙,食品等が,相対価格が上昇あるいは,その低下が緩やかであり,逆に精密機械,電気機械,衣料・皮革等は,著しく低下しており,前者の収益性が高いことがわかる。このことは,前述の生産回復の状況とほぼ適合している。相対価格の低下した部門から上昇した部門へ生産要素が移行していくことは,長期的にみて,望ましい構造転換である。その意味で,ポーランドの産業構造の変化は,相対価格の変化に対応した合理的なものと考えられる。ハンガリーについても,基本的に同様のことがいえる。このように,相対価格の変化が,資源配分を望ましい方向に変化させるシグナルとしての機能を発揮しつつある要因としては,両国が全般的なインフレの鎮静化に成功した二とが挙げられる。

3 本格的回復への残された課題

これまでみてきたように,輸出拡大が生産回復の重要な要素の一つであった。しかし,冒頭でみたように,中欧諸国の輸出,特にEC向けの輸出は鈍化傾向がみられる。一方,ポーランドでみられたように,移行期初期の生産の落ち込みから,経済を回復させていく上で民間部門が大きな役割を果たしている。しかし,民間部門の増大の多くは新興あ中小企業によるもので,大規模国営企業の民営化は遅れているのが現状である。今後,本格的な生産回復,産業再編成のためには,この大規模国営企業の構造転換が必要不可欠である。ただし,それに伴い失業増大は避けられず,失業給付等の歳出増加圧力から,財政赤字拡大とインフレ圧力増大という不安定要因が存在する。以下では,今後本格的回復を図る上で残された課題について検討する。

(1) 財政赤字の拡大

中・東欧諸国では初期の高インフレの状態と比較すれば,著しい安定化の進展がみられる。しかし,依然年率2桁以上のインフレ率が持続している。この原因の一つとして顕現化してきた不安定要因は,財政赤字の拡大である。ポーランドを例にとると,財政赤字の拡大の要因として以下の点が挙げられる(第2-4-13表)。

第1に歳入面からは,税収基盤の脆弱性があげられる。国営企業のパフォーマンスの悪化で,法人税収は大幅に滅少し,一方で国営企業に対し税率をこれ以上引き上げられないという結果になった。このため93年7月より従来の売上税に代わりより課税ベースの広い付加価値税が導入された。今後この付加価値税が歳入の確保に通じることが期待される。

第2に歳出面からは,社会保障費の急増が重要な問題である。今後,産業の構造転換に伴い大量の失業者を生むことは避けられないため,失業給付等の増大が懸念される。また,年金の賃金スライド制,年金受給資格に所得制限がないこと,医療費が無料であること等も社会保障費の拡大の原因となっている。

今後は,社会保障費を適正な“socialminimUIT1″にもっていくことが重要であろう。

(2) 対EC貿易の不振

中・東欧の西側先進国への輸出拡大は,西側が積極的に市場を提供してきたことにもよる。特にECとの間の連合協定(準加盟協定)に関し,中欧諸国については,92年3月に貿易条項が発効し,ルーマニア,ブルガリアについて・は,93年5月,7月にそれぞれ発効した。EFTAとの間でも,自由貿易協定が締結されている。しかし,最近のEC諸国の景気低迷下において,鉄鋼,農産物等でECの貿易障壁が高まっている(92年11月の鉄鋼についての反ダンピング課税,93年4月の口蹄疫を理由とする酪農製品・肉類の輸入停止等)。当初のECとの連合協定の計画の中で示された,段階的な関税引下げ等についても,93年に入ってからは一部の製品に進展がみられるにとどまっている(第2-4-14表)。ここで考えねばならないことは,中欧諸国は前述のように,輸出をてこにして新しい産業部門が生産回復を牽引してきたのであり,これを促進することが最も有効な支援策であるということである。また長期的視点からは,中・東欧の発展はEC製品の輸出市場の拡大を意味すること,中・東欧の安価な製品を締め出すことは,ECの市民にとっても効用の減退につながり,EC域内での適切な産業再編の進展を遅らせることになることが指摘できよう。

(3) 市場経済(に適した企業経営の確立

自立的な回復を定着させていくためには,市場経済に適した企業経営の確立が必要であり,そのためには破産法の整備や国営企業の民営化が重要である。

以下この2点について見てみることとする。

(破産法の整備)

破産法の制定及びその厳密な適用は,一般に①企業の財務規律を強化するとともに,②相対的に生産性の低い部門を縮小し,高い部門に生産要素を移動させることを可能にし,産業の構造転換を後押しするものとして重要である。

中・東欧ではハンガリーで,91年9月に成立した破産法が92年1月より施行された。しかし,破産の進展は失業増大等の社会的コストを伴い,政治的にも厳密な適用は困難になり,チェコも91年7月新破産法を成立させながら,先に実施したハンガリーの動向を注視して,施行を延期していた。93年4月22日にようやく実施に移されたが,破産宣告後の企業への融資の可能性や,農業関連企業への適用の延期等,様々な特別措置を含んだ改正がなされている。

(大規模企業民営化の遅れ)

中・東欧の民営化では,小規模民営化は,小売・サービス部門を中心に順調に進展しているものの,大規模企業の民営化は,遅れが目立っている。チェコでは93年に入り第1次バウチャー民営化を終了したばかりであり,ポーランドでも93年5月にようやく法案が議会を通過したところである。大規模国営企業の民営化を遅らせる最も大きな要因は,これら部門が多くの余剰人員を抱えていることから予想される大量の失業者の問題である。しかし,計画経済時代からの余剰人員削減は,市場経済に合致した効率的な企業経営を行う上では,避けざるを得ない課題である。ここで参考として,ポーランドについて,92年の1単位売上(年間100万ドル)当たりの人員をギリシャ,スペインと比較してみる(第2-4-15表)。製造業全体では,ポーランドは,ギリシャ,スペインの3~5倍近い雇用人数をかかえていることになる。特にポーランドで不振の機械産業では更に大きな差がみられる。仮に,ギリシャ,スペイン並の人員にするためには,雇用者を1/3~1/5にまで減らす必要があり,ポーランドの工業部門の被雇用者の約1/3がこの部門にあることがら,構造転換が進めば,多くの失業者が生まれることは避けられない。しがし,市場経済化の成功のため生産性の向上を通じた輸出競争力の強化は避けられない道である。

このような,国営企業における過剰な労働力を吸収し,その生産性を向上させると同時に,新たな生産のフロンティアを拡大するためにも,民間部門の拡大が重要である。そのため,国営企業の民営化とともに新興の小規模民間部門の成長を一層促進させることが望まれる。一方で,何のための民営化であるのか忘れてはならないであろう。一部では民営化を絶対視する向きもあり,単なる所有権の移転のみで既存の企業の構造転換に無関心な例もみられる。民営化,民間部門の拡大を含め,過剰な労働力の段階的移動と競争力の向上を図りながらの,産業構造の転換を,困難ではあるが,進めていくことが必要であろう。