平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第13章 オーストラリア
91年8月20日,ケリン蔵相は47億豪ドルの赤字を見込んだ91/92年度(91年7月~92年6月)予算案及び経済見通しを発表した。その概要は以下のとおり。
① 予算案
歳出は1,015億豪ドル,前年度比5.7%の伸びを見込んでおり,前年度の伸び率同9,3%を大きく下回った。ただし,景気を刺激するような歳出拡大措置は盛り込まれておらず,主な増加項目は,社会保障・福祉,教育となっている。
他方,歳入は968億豪ドル,前年度比1.2%の減少を見込んでいる。歳入の減少は,主に景気後退に伴う税収の減少によるものである。この結果,86/87年度(26億豪ドルの赤字)以来の47億豪ドルの財政赤字が見込まれている。
② 経済見通し
91/92年度の実質GDP成長率を前年度比1.5%と見込んでおり,90/91年度実績のマイナス0.9%からのゆるやかな回復を見込んでいる。
輸出が前年度比5.25%の増加となる一方で,輸入が同マイナス1.25%となると見込んでおり,成長に対する純輸出の寄与が大きい。経常収支の赤字は引き続き減少すると見込んでいる。
消費者物価上昇率は3.0%と,ほぼ20年ぶりの低い水準を見込んでいる。
雇用情勢はさらに悪化し,失業率は10.5%に上昇する見通しである。
景気後退が続く中で,91年3月12日,政府は保護関税政策からの脱却,競争力の強化等を目的とした経済・産業政策声明を発表した。
主な内容は次の通り。
(関税の引き下げ)
・一般関税を1992年の10~15%から1996年までに5%に引き下げる。
・乗用車の関税率を1992年の35%から毎年2.5%ずつ,2000年までに15%までに引き下げる。
(90年代に向けての投資)
将来の持続的経済成長と,生活水準を維持するために必要な投資を歪曲しないよう政府として次の措置をとる。
・卸売税の免税範囲を拡大する。
・減価償却規定を見直し,実態に沿ったものとする。
・環境問題のインパクトの調査への支出は10年間は完全に免税とする。
(クレバーカントリーの建設)
・研究協力センターのネットワークの創設するために,15の研究協力センターを指定する。これらのセンターは,資源産業,製造業,情報産業,環境及び医療の分野での研究に焦点をあてる。
・研究開発費に対し税控除措置の延長を行う。
・大学院レベルの研究に対する表彰の数と金額の増大を図る等の教育システムに対する施策を行う。
なお,この経済・産業政策声明で述べられたプログラムを実行するためのコストは,90/91年度(90年7月~91年6月)が0.33億豪ドル,91/92年度が4.46憶豪ドル,92/93年度が8.54億豪ドルである。