平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第5章 イタリア
イタリアの財政赤字は,EC諸国の中でも極めて大きく,90年度は144兆リラ,GDP比11%にも上っている。経済・通貨統合を進めていく上でも,イタリアの財政赤字は大きな問題点と認識されており,この財政赤字の削減は急務となっている。このため91年度の予算案では財政赤字を前期比滅となるよう,増収,歳出削減を行うとしていたが,その目標の達成は困難視されている。
① 91年度(91年1月~12月)予算関連法案閣議決定(90年9月28日)
政府は,91年度の財政赤字額が規定経費により算出すると180兆リラになるのに鑑み,90年9月,48兆リラの財政赤字削減策措置を行い,91年度の財政赤字額を132兆リラに抑えることを閣議決定した。48兆リラの内訳は,歳入増19兆リラ,歳出削減20兆リラ,利払い費の節約3.5兆リラ,国有財産の売却5.6兆リラとなっている(下表参照)。
② 91年度予算関連法案可決・成立(90年12月21日)
イタリア下院は12月21日,9月28日に閣議決定された91年度予算関連法案を賛成260票,反対136票で可決した(上院は12月19日可決)。この結果,同法案は正式に成立した。
③ 91年度補正予算(91年5月11日政府決定,7月11日議会可決)
政府は91年度の財政赤字を当初の132兆リラに抑制するため,5月118,歳出削減と増税による総額14.2兆リラの追加的な財政赤字削減策を決定した。これを受けてイタリア下院は7月11日, 91年度の補正予算を可決した。補正予算の総額は14兆2千億リラで,歳出削減と奢侈品への新税を内容としている。 内訳は以下の通りである。
しかし,こうした決定にもかかわらず,政府は9月30日,91年度の財政赤字の見込み額を,132兆リラ(対GDP比9.3%)から,141兆リラ(同10.0%)に修正した。
④ 中期的な財政赤字削減計画
政府は5月21日,92年度以降3年間を対象とする予算・経済計画を承認した。同計画では,92年度以降3年間における成長率目標とあわせて,合計120兆リラの歳出削減・増収措置が盛り込まれている。 その概要は以下の通りである。
92年度における合計49.1兆リラの財政赤字削減措置の内訳は以下の通りである。
さらに6月26日,上記決定を再確認し,今年度の財政赤字を同国のGDPの10%以内(91年度目標9,3%)に抑えること,1994年までにはこれをGDPの5.5%にまで削減するという政府計画を再度表明した。
① 92年度予算案閣議決定(9月30日)
政府は,92年度政府予算案を91年9月30B,閣議決定した。予算案は大幅な税収増と歳中削減を見込んでいるが,なお128兆リラの財政赤字が発生する。予算案には,総額55兆5千億リラの赤字削減策が盛り込まれている。その内訳は以下の通りである。
イタリア上院は11月18日,上記法案を承認,下院に送付した。下院は年内にも可決の見通しである。
② 経済計画の閣議決定(9月30日)
イタリア政府は,91年以降95年までの経済計画を閣議決定した。その概要は以下の通りである。