平成3年

年次世界経済報告 資料編

経済企画庁


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I 世界経済白書本編(要旨)

第4章 市場経済の拡大と再編

第1節 西太平洋地域の分業の新たな展開

(アジアの域内貿易の拡大)

西太平洋地域では,アジアNIEsの内需拡大や対外直接投資,アセアンの工業化の一層の進展,中国・香港の関係強化等を背景に,域内貿易が拡大するとともに,相互依存関係が深まりつつある。アジアNIEsは,88年以降,為替レートや労働コストの上昇,米国との貿易摩擦等を背景に対米輸出を減らしつつ,欧州や域内アジアへの輸出を伸ばしている。また,アジアNIEsの対外直接投資は北米,アセアン向けに急増し,90年には直接投資の受け入れ額を上回った。アセアンでは,最近,日本に加えてアジアNIEsがらの直接投資が急増し,日本,アジアNIEsからの輸入が増加しており,輸出では,機械類等製品のシェアが高まっている。アセアンの域内貿易も,外国からの直接投資により自動車・同部品工場が各国に展開されるなかで,拡大に向かいつつある。中国は,香港からの資本を受け入れつつ,香港とあ貿易シェアを高めているが,香巷向け輸出の多くは米国向けに再輸出されている。

第4-1-4図 ①アジア主要国の輸出が世界貿易に占めるシェア

第4-1-5図 アジアNIEs(除く,香港)の対外,対内直接投資の推移

第4-1-8図 アセアンの地域別直接投資の受入状況

(局地経済圏を通じ厚みを増す域内の経済関係)

最近,域内の近接国・地域間で局地的な経済圏を形成することにより,経済関係を強化しようとする動きがみられる。華南経済圏,成長の三角地帯,環日本海経済圏,インドシナ経済圏などがその例である。これらは,多かれ,少なかれ東西協調の進展という政治環境の変化を背景に,経済面の相互補完関係を基礎にしつつ,貿易,投資を通じて経済関係を強化しようとするものである。

こうした経済関係が,西太平洋地域全体の経済関係に重なることにより,新たな発展のダイナミズムが生まれることが期待される。

第4-1-1表 西太平洋地域における局地経済圏の概要

(韓国・台湾の構造調整と新たな分業関係の模索)

韓国,台湾では輸出主導型の高度成長期を経て先進国に急速にキャッチ・アップし,対外的には市場開放,国内的には労働コストの上昇,政治面の民主化という課題に直面している。このため,両国は,対外面では対米輸出依存の是正,市場の開放,労働集約型産業の海外移転を進めているほか,国内では,ハイテク産業の育成,技術開発の推進等に取り組んでいる。さらに,これまでの高度経済成長を支えてきた経済システムの再編が課題となってきている。具体的には韓国では財閥の規制や金融制度の改革,台湾では公営企業の民営化等に取り組んでいる。このようにして韓国,台湾が構造調整を進めることは,西太平洋地域の分業関係を一層高度化し,域内の経済発展に資するものである。


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