平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第11章 中  国:経済引締め策の一部見直しから回復に向かう

1. 概  観

88年秋以降の経済引締め策により,それまで過熱気味だった経済は鎮静化へと向かったが,一方で工業生産の停滞,一失業者の増大等が生じ,経済は不振に陥った。このため89年末以降,重点業種への投資強化,金融の緩和を行う等引締め策が一部見直され,経済も90年に入ってからは回復に向かいつつある。しかし,国内需要が依然として不振であるため,全体としては伸び悩みがみられる。

実質国民総生産の伸び率は,89年は経済引締め策が影響し前年比3.6%と大幅に鈍化した(第11-1表)。90年もその傾向は変わらず,1~6月期前年同期比1.6%,1~9月期同2.7%と回復基調にあるものの,低い伸びに止まっている(90年目標は5.0%)。89年末から90年初にかけて伸びが低下した鉱工業総生産額は,90年3月以降緩やかに増加し,10月以降は2桁の伸びとなっている。物価上昇率は,89年10月に前年同月比で一桁台の伸びに下落した後,月を追ってその上昇率を低め,90年6月以降は1%台を割り込んでいる。また,赤字続きであった貿易収支は,12月の元の対ドル・レートの切り下げ等により輸出が増え,国内需要の減退等から輸入が減少したことから,90年に入り黒字へと転化している。


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