平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第8章 ソ  連

5. 対外経済関係

ソ連の貿易(名目,以下同,第8-2図及び第8-4表)は80年代以降伸びが鈍化し,86年,87年にはソ連の主要輸出品である石油の国際価格低下から輸出入総額が前年比でマイナスに陥った。その後,88年からやや回復を示したものの伸び率はまだ低く,90年にはコメコン貿易や途上国貿易の縮小から輸出が1~9月-期435億ルーブル(前年同期比12.0%減)と大幅に減少し,輸入は同525億ルーブル(同0.3%増)とやや増加したことから,同期間の貿易収支は90億ルーブルの赤字となった。ソ連の貿易収支は77年から黒字を続けてきたが,89年に年間34億ルーブルの赤字に転換し,90年には9か月間で90億ルーブルの赤字と急速に悪化している状況にある。また,ソ連の主要な外貨獲得手段である石油輸出が減少し(対OECD88年9,823万トン,89年7,825万トン),この減少分を金やダイヤモンドの売却で補っているものの外貨準備は減少している。他方,貿易権限を得た企業が外貨の裏付けなく西側からの輸入を拡大したため,90年には西側への支払い遅延が頻発した。

取引圏別に90年1~9月期前年同期比でみると,対先進資本主義諸国(シェア28%)では輸出1.2%増,輸入2.1%増とやや増加しているのに対し,対コメコン諸国(シェア54%)では輸出16.7%減,輸入4.0%減,対発展途上諸国(シェア18%)では輸出13,6%減,輸入9.9%減と大幅に縮小している。

物不足に陥っている消費財市場の安定化のため,民生用製品の輸入が積極的に行われ,90年1~9月期の輸入総額の36%に達した。特に増加が顕著なものをみると,肉・肉製品71%増(1~9月期前年同期比,以下同),薬剤44%増,絹織物41%増,靴下類26%増,茶25%増,穀物17%増,かんきつ類14%増,動物性油脂10%増,綿織物9%増等となっている。

外国との合弁企業の推進が積極的に行われているが,登記された合弁企業数は,90年9月末で2,051件(3月末1,542件,6月末1,830件)と次第に増加している(ただし実際に稼働している件数はこの数字をかなり下回る)。また,90年10月には外資100%の企業を認める大統領令が発令され,本格的有外資導入に取り組んでいる。更に,通貨ルーブルの外貨交換性実現を目指して,ルーブルの貿易レートを,11月1日より1ドル=1.8ルーブルに1本化する措置がとられた(従来「外貨係数」と呼ばれる約2,000種の貿易レートが存在)。この貿易レートの他には1ドル=0.56ルーブルの公定レートと,1ドル=5.6ルーブルの旅行者用特別レートがあり(以上3つは公認レート),更にヤミ市場での実勢レート(1ドル=約20~30ルーブル)がある。

ソ連は「新思考」外交の下で西側諸国との関係改善を進めてきており,90年5月にはGATTへのオブザーバー参加を認められ,9月にサウジアラビア,韓国と国交を回復した。また,7月のヒューストン・サミットではソ連への技術支援が共同合意されるとともに独仏等一部の国による金融支援も容認された。また,同サミットでの合意に基づき,西側の効果的な経済援助に資するため,IMF・世銀,OECD等がソ連経済についての詳細な調査を実施し,その改革に関する勧告を行った(12月22日,後述)。


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