平成2年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1989~90年の主要国経済
第6章 イタリア:景気はやや減速へ
生計費指数上昇率は80年の前年比21%増をピークに低下を続け,87年には同4.6%とイタリアとしては極めて低い上昇率となった。88年も前年比5.0%とやや高まったものの落ち着いた動きとなったが,89年は1月に基礎食料品,雑誌等に対する課税(4%)を実施したこと.から年初に前年同月比6%台へと高まった。その後年半ばにやや高まった後(6,7月前年同月比7,0%),年末以降上昇率は緩やかに低下を続けた(第6-3図)。90年6月には5.6%まで低下したものの,8月以降は石油価格の上昇によるエネルギー価格の上昇から再び前年同月比6%台で推移した(90年前年比上昇率6.1%)。
時間当たり賃金上昇率(製造業)は新スカラ・モビレ施行(86年より)後は1けた台の緩やかな上昇にとどまっており,89年は前年比6.1%となった。しかし89年末以降上昇率が徐々に高まってきており,90年7月には前年同月比7.4%となっている。8月以降石油価格の上昇から生計費指数も高まっており,今後賃金にも影響がでてくるのではないかとみられる。
また90年は3年に1度の賃金協定の改定年に当たっている。この交渉は難航し5月末よりスト及び8~20万人規模のデモが行われた。今年は賃金協定の改定についてだけではなく,スカラ・モビレ(毎年6月末に向こう1年間の更新をする)の存続自体についても使用者側と労働者側との間で意見が分かれ,廃止を要求する使用者側と更新を求ある労働者側とで激しく意見の対立がみられた。結局,91年については,現行の賃金システムを存続させることで折り合いがつき,そのかわり91年の6月に再び新たな賃金システムについての交渉をおこなうこと,企業の労働コスト負担の軽減のために企業側に配慮した税制案を政府が考案することが約束された。