平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第5章 フランス:増勢やや鈍化ながら景気は堅調

4. 賃金・物価

(物価は概ね落ち着いた動き)

消費者物価上昇率(前年同期比)の動きをみると,89年3.6%の後,90年に入っては,1~3月期3.4%,4~6月期3.1%,7月3.0%とおおむね落ち着いていたものの,8月以降は中東情勢の一緊迫化による石油価格の上昇から,やや高まり8月3.5%,9月3.8%,10月3.9%となった。しがしその後は11月3.6%,12月3.4%と落ち着きをとりもどした。また,エネルギーを除いたベースでみると,8月3.3%,9月3.1%,10月3.2%,11月3.0%と落ち着いたものとなっている。(第5-4図)。部門別の上昇率をみると,工業品部門は,89年春から90年前半にかけて徐々に上昇率が低下してきたが,エネルギー製品を含んでいることから,8月以降は大幅に上昇し7月1.6%から10月4.0%と3か月で゛2.4%ポイントの上昇となった。しがし,11月には0.5%ポイント下落した。一方,食料品部門は低下してきており,サービス部門はおおむね落ち着いた動きとなっている。

卸売物価は89年は食料品部門で前年比10.2%増,エネルギー部門で前年比5.8%増と高まった。しかし,90年に入って,エネルギー部門は1~3月期前年同月比3.6%増の後,4~6月期は同0.2%減と落ち着きを取り戻したが,食料品部門は1~3月期同6.8%増,4~6月期同4.2%増と上昇率は下がっているものの,依然高水準である。生産者価格(中間財)上昇率は,89年5.3%増の後,90年に入ってからは,基礎化学部門や非鉄部門での低下もあり,90年1~3月期,前年同期比1.7%減,4~6月期同2.2%減となっている(第5-5図)。

(やや高まりがみられる賃金上昇率)

賃金上昇率(民間部門)は,政府の賃金抑制政策(政府は,インフレ抑制の観点から,公務部門・公共部門について,賃金交渉に関する指令を発し,賃金交渉の場でも賃金抑制的スタンスを明確にしてきた。これは,民間部門にも影響を与えてきた。)により,88年,89年とも3.4%と比較的低い伸びとなった後,90年に入って,1~3月期前年同期比4.4%増,4~6月期同4.8%増,7~9月期同5.1%増とやや高まりがみられる(第5-4表)。90年は昨年のような公務員や国営企業労働者の大規模なストライキは発生していないが,このような賃金上昇率の高まりが90年4~6月期に,企業の設備投資意欲を後退させる要因のひとつとなったとも見られる。なお,11月下旬には,政府は公務員の賃金の引き上げ(12月1日から1.3%)を発表,この結果,公務員の賃金上昇率は90年5.8%(前年4.8%)となるとしている。

単位当たり賃金コストは,89年前年比0.9%の上昇となった後,90年に入り,1~3月期前年同期比2.8%,4~6月期同4.1%上昇した。生産性上昇率(時間当たり)をみると,89年前年比3.2%増となった後,90年1~3月期前年同期比1.5%増,4~6月期同0.6%増とこのところ伸びがやや鈍化している。

第5-5表 フランスの貿易動向~財・地域別輸出,輸入の推移


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