平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第5章 フランス:増勢やや鈍化ながら景気は堅調

1. 概  観

フランス経済は,88年,89年と3%台後半の高めの成長を記録した後,90年も引き続き拡大している。ただし,設備投資は堅調に推移する一方,個人消費の伸びは鈍化しており,総じて増勢に鈍化がみられる。この間の外需の動きをみると,年初,暖冬等によるエネルギー需要減,航空機輸出の好調等もあり,寄与度が大幅なプラスとなったが,4~6月期以降は,航空機を中心とする輸送機器部門や農産物輸出の不調の他,設備投資に伴う資本財輸入の増加等からマイナスの寄与度となった(第5-1図)。

消費者物価は,年初来落ち着いていたものの,8月以降の中東情勢の緊迫化に伴う石油価格の高騰の影響から高まりを示していたが,11月以降は落ち着きを取りもどした。また,エネルギーを除いたベースでみると,8月以降もおおむね落ち着いた動きとなっている。

雇用情勢は,経済の拡大が続くなか,サービス業を中心に工業,建築等全般的な雇用の増加がみられ,失業率は緩やかながら低下してきた。しかし,90年後半には下げ止まっており,失業率水準も依然として高く厳しい状況にある。

貿易収支は,設備投資の堅調な伸びを背景に,資本財輸入が引き続き増加するとともに,石油価格の高騰によりエネルギー製品輸入額が大幅に増加している。また輸出面では航空機を始めとして工業品輸出が不振となっている。この結果赤字幅は89年を上回ると見込まれる。

財政面では,9月中旬1991年度予算案が閣議決定された。その内容をみると,引き続き,インフレ抑制,財政均衡を主目標とする緊縮方針が貫かれており,歳出の伸びは,前年度当初予算比4.8%増と抑え気味とし,歳入の伸びは景気持続を前提に同6.0%増としている。予算案では91年度財政赤字を前年度当初予算比100億フラン圧縮し,802億フランとすることとしていた。しかし,11月に,教育予算の5億フラン増額等の改訂が行なわれた結果,財政赤字は前年度当初予算比96億フラン減の806億フランとすることとなった。金融政策は90年に入り,経済拡大の持続を目的として,緩和気味の運営がなされている。


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