平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第3章 イギリス:景気後退色強まる

1. 概  観

イギリス経済は,89年以降大きく成長を減速させており,90年後半から91年前半にかけて,更に悪化が見込まれている。実質GDPの伸びは,89年に2.5%と前年から半減した後,90年には1%,91年1/2%にとどまると政府はみている。個人消費,設備投資とも伸びが鈍化し,住宅投資が減少を続けるなど内需の伸びが大きく鈍化するこ,とによる。特に,90年下期から91年上期にかけては,内需が減少し,実質GDPも低下すると予測されている(第3-1図)。

インフレ率は90年には,住宅ローン金利上昇や人頭税移行にともなう住居費の上昇を中心に大幅に高まり,特に8~10月には石油価格の急騰もあって二桁にのせた。しかし,インフレ率は現在がピークで,今後は急速に鈍化が見込まれている(政府見通し,91年10~12月期の前年同期比上昇率5%)。

雇用者数は90年に入ってからも増加しているが,製造業では減少を続けている。失業者数は,86年7月以来減少を続けてきた後,90年4月以降増加に転じ,11月現在,176万人となった。失業率も90年3~4月の5.6%を底にやや高まり,11月現在6.2%となっている(86年夏のピーク時は11.3%)。失業率の低水準を背景に,賃金上昇率も年央以降,二桁となっている。

経常収支赤字は89年夏以降徐々に縮小しており,90年1~11月累計は150億ポンドと依然高水準ではあるが,前年同期(189億ポンド)を下回った。貿易収支が赤字幅をかなり縮小したものの,貿易外収支の黒字幅はこのところ縮小している。政府は,内需が弱い中で経常収支赤字は縮小を続けるが,石油価格上昇により世界貿易の伸びも鈍化するため,91年には赤字幅は110億ポンド(GDP比13/4%)となるとみている。

金融面では,88年央以降の引締め政策の影響でマネーサプライの伸びが鈍化し,90年夏以降,MIOの伸びは目標圏(1~5%)におさまっている。この中で,イギリスは,10月上旬,ECの為替相場調整メカニズム(ERM)に参加し,同時に,金利引下げを誘導した。財政面では,景気が悪化しているにもかかわらず,インフレ抑制を優先する政策を維持するとしている(秋季財政演説)。11月下旬,サッチャー首相が辞任し,メージャー内閣が発足した。新政権は,基本的にはサッチャー政権の政策を継続するものとみられている。


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