平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第2章 カナダ:マイナス成長,2四半期続く

4. 賃金・物価

89年の消費者物価上昇率は4,6月に連邦税率の引き上げがあり5%台に高まったもののほぼ落ち着いた動きとなり,前年比5%となった(第2-4図)。90年に入ると前年の税率の引き上げの影響が除去された後は上昇率が,前年同月比4%台にまで低下していたが10月にはエネルギー価格の上昇から同4.8%に高まった。消費者物価のうちサービス価格は89年後半から90年にかけて前年比6%程度で推移した後,90年夏には5%台前半にまで低下している。財価格は89年前年比4.4%の後,90年4月以降景気の鈍化に伴い需給が緩和したこともあり,3%台前半の上昇率となるなど急速に落ち着きをみせている。工業製品価格指数上昇率は消費者物価とは対称的な動きを示しており,一次金属,石油価格の安定,カナダドル高から89年にはほぼ一貫して上昇率が前年同月比で低下をみせ年全体では前年比2%となった。90年入り後も前年同月比マイナスが続いていたが,9月以降エネルギー価格の上昇からやや高まった。

賃金上昇率をみると88年以降上昇率が高まったが,89年は前年比5%とさらに高まりを見せ,政府は物価とともに賃金上昇にも注目し,厳しい態度をみせている(第2-5図)。90年に入ってからも1~3月期前年同期比5.3%,4~6月期同5.1%,7~9月期同5.5%と高い上昇率が続いている。このところの賃金上昇は公務員部門が民間部門を上回る上昇率を示していること,かつては製造業を下回っていたサービス業の伸びが製造業なみに高まっている点が特徴となっている。90年半ば以降失業率が急速に高まったことは賃金上昇を抑える要因となるとみられるものの,依然警戒が必要な状況にある。


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