平成2年

年次世界経済報告 本編

拡がる市場経済,深まる相互依存

平成2年11月27日

経済企画庁


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第4章 一体化進む世界経済の課題

第3節 エネルギー・地球環境問題への取組み

70年代に,ローマ・クラブの「成長の限界」の指摘や2度にわかる石油危機の経験から,エネルギー資源,食料,人口,環境等の制約が世界経済の成長や国民生活の安定を阻害することへの懸念が生じた。そして,こうした数々の制約条件と経済成長の対立を如何にして解くがが世界の関心事となった。

実際,80年代に先進国は省資源,省エネルギー型経済構造への転換を進め,過去に比べてエネルギー依存度の低い経済体質を作り上げた。しかし,80年代後半の原油価格の低迷によって,先進国の省エネへの努力はこのところ停滞が目立ってきており,特に,アメリカのエネルギー消費の原単位は他の先進国に比べて高い水準を維持している。他方,発展途上国やソ連・東欧等の旧共産圏(以下旧共産圏と呼ぶ)では,先進国に比べてエネルギー消費の伸びが高く,世界のエネルギー消費に占めるシェアも高まっており,このため,エネルギー市場の動向に左右されやすい経済構造になっている。

他方,環境面では,新たにオゾン層の破壊,地球温暖化といった地球規模での環境問題への関心が急速に高まっており,この面からも経済成長が制約される可能性が生じてきている。

最近の石油価格の急騰は,石油等の非再生資源の供給が永遠ではないこと,このままの消費を続ければ資源の枯渇が早まり,将来の世界経済の成長を損なうリスクが高まっていることを再び世界に認識させるきっかけとなった。一方,エネルギーの開発,生産,消費,廃棄の諸過程が環境に負荷を与えており,エネルギー問題と環境問題は相互に深く関わっていることが指摘されている。そこで,本節ではエネルギー問題と地球環境問題を取り上げ,今後世界経済が持続的成長を行っていくために協調して取り組まなければならない課題について考えてみる。

1. エネルギー問題

(1)世界のエネルギー消費の長期的な構造変化

世界の一次エネルギーの消費量は,第1次石油危機後の74年から75年にかけてやや伸び悩んだものの,79年まで増加を続けた。その後,第2次石油危機を背景に先進国における需要の減少から80年から82年まで世界全体でも滅少傾向となったが,83年以降世界経済の回復を背景として増加している(第4-3-1図)。とりわけ,近年,発展途上国の伸びが顕著であり,世界に占める発展途上国による消費の構成比は73年の10.5%から89年には17.0%へと上昇している。旧共産圏も一貫して増加を続けており,同構成比は73年の28.2%から89年の32.4%に上昇している(第4-3-2図)。

また,地域別のエネルギー消費源の構成比をみると(第4-3-1表),世界全体では,89年には石油,石炭,天然ガスの順になっているが,73年の第1次石油危機以来石油消費が抑制され,天然ガス,原子力等の利用が増大している。地域別にみると,OECD,発展途上国ではおおむね石油が半分程度,次いで石炭,天然ガスの順になっている。一方,旧共産圏では,石炭が大きな割合を占め,次に石油と天然ガスがほぼ同じ割合となっている。特に,ソ連においては天然ガスの比重が4割と最も大きく,中国では石炭が8割を占めでいる。

(2)エネルギー消費のGNP原単位の動向

世界のエネルギー消費のGNP原単位(一次エネルギー消費(石油換算トン)/実質GNP(88年価格米ドル換算))は,全消費の5割以上を占める先進国の低下にともない70年代から80年代にかけて低下した結果,70年の0.48トン/千ドルから88年の0.42トン/千ドルに改善した。しかしながら,近年低下傾向に鈍化がみられる(第4-3-3図)。

地域別にみると,先進国では,70年の0.45トン/千ドルから89年の0.33トン/千ドルへと約2割強改善しているが,先進国の中でも日本等極めて低い水準を達成している国,地域もあれば,アメリカのように他の先進国より極めて高い原単位と,なっている国,地域もある。発展途上国の原単位は,70年代半ばに一時低下したものの,その後は一貫して上昇を続けており,その水準は先進国の約1.7倍となっている。旧共産圏の原単位も発展途上国と同様に上昇を続けており,その水準は発展途上国平均をも上回っている。特に中国の原単位は1.8トン/千ドルと先進国の5.4倍にも達し,そのエネルギー消費構造は極めて非効率なものとなっている(先進主要国及び旧共産圏の各国のエネルギー消費のGNP原単位は付表4-7を参照)。

なお,人ロー人当たりのエネルギー消費量は,産業活動が活発な先進国及びソ連・東欧が,エネルギー消費水準が高いことを反映して大きくなっている。しかし,先進国の中でもアメリカの水準が,日本・ECの2倍強と極めて高い。また,低開発国の多いアジア,アフリカといった途上国地域及び人口の多い中国で低い水準となっている(付表4-8)。

(3)資源制約と経済成長

国際エネルギー機関(IEA)によれば,世界の一次エネルギーの需要は,87年には約77億トン(石油換算)となっているが,今後,世界経済の拡大や人口の増加等にともなって着実に増加し,2005年には現在の1.5倍の約119億トン(同)に達するとされている。特に,発展途上国のエネルギー需要は,高い経済成長,急速な人口増加などを背景に大幅に増加し,2005年には87年約13億トン(石油換算)の2.2倍の約28億トン(同)に達するものと見込まれ,旧共産圏も87年約25億トンから2005年には1.7倍の約42億トンに増加するとされている。この結果,世界のエネルギー需要に占める発展途上国と旧共産圏の合計シェアも87年の49%から2005年には58%に高まり,今後のエネルギー需給の動向に大きな影響を及ぼすものと予想される。

一方,主要エネルギー資源の供給の動向をみると,まず石油供給については,第1章3節でみたように,非OPEC諸国の資源制約の顕義化が既に現れ始めており,今後OPECへの依存度が急速に高まっていくことが予想される。しかもOPECの供給の大部分は中東の湾岸産油国に集中しており,この地域は政治情勢等の変化から供給不安が常に付随している。また,天然ガスはソ連,中東,北米の3地域に偏在しており,その他の地域では埋蔵量が乏しい。従って,今後天然ガス需要が順調に拡大すれば,将来的にはその他の地域で資源制約が顕在化し,急速にソ連,中東への依存度が高まっていくことが予想される。石炭は石油や天然ガスほど偏在性はなく,埋蔵量も豊富なことから,今後長期にわたる安定供給が可能である。しかしながら,他のエネルギー源に比べCO2の排出原単位が高いことから,今後環境面から利用が制約されてくる可能性がある。

したがって,今後エネルギー需要が順調に拡大すれば,各エネルギー資源とも程度の差はあれ,長期的には供給制約の顕在化が見込まれる。また,後に述べるように,化石燃料は地球温暖化問題などの深刻化により,環境面からもその使用が制約される可能性がある。このような資源制約の顕在化はエネルギー消費量の抑制を通じて経済成長を抑制する方向に働くものと考えられることから,こうしたエネルギー資源の制約を克服し,次世代が利用できるエネルギー資源を残していくためには,後で述べるようにエネルギーの効率的利用や代替エネルギーの開発等に積極的に取り組む必要がある。

(4)資源制約と安全保障

日本はエネルギー自給率が17.7%と主要先進国の中で最も低いことから,エネルギーの安定確保は自国の安全保障の上で最も重要な,事項の一つとなっている(第4-3-2表)。エネルギー安全保障は,代替エネルギーの開発等によるエネルギー供給源の多様化,省エネルギー活動の一層の,推進等の総合的な取り組みを通じて確保されるべきであることは言うまでもない。しかし,エネルギー資源の大半を海外に依存している日本にとって,安定的かつ長期的な輸入調達先の確保がエネルギー安全保障の上で極めて重要である。そこで,現在日本がエネルギー安全保障に対応した主ネルギー輸入を行っているか原油を例にみてみる。

第4-3-4図は,日本の平成元年度の国別原油輸入シェア実績と世界の原油の確認埋蔵量シェアを比較したものである。現在,日本は中東地域から総輸入量の71%,アジア諸国から南16%を輸入しており,原油調達に関してこの両地域に実に9割弱依存している。これに対して,同地域の埋蔵量は7割と依然大きなシェアを占めているものの,輸入シェアを約2割下回っている。中南米,アフリカ,北米,ソ連など他の地域は原油輸入実績は上記2地域に比べて極端に低いものの,埋蔵量は世界全体の約3割を占めている。エネルギー資源の長期的な安定確保のためには,資源賦存度の高い地域からの重点的な輸入は当然のことであり,その意味で中東地域及びアジア地域からの原油輸入は正しい選択である。しかし,原油の長期的な安定供給番より確実なものとするためには,従来輸入実績があまり多くない地域からの輸入を通じて調達先の多様化をはかることが重要であると思われる。もっとも,日本への距離等の物理的要因が供給量を決定している面もあり,また埋蔵量は大きいものの輸出余力が余りない国も含まれていることから,この結果が全ての地域・国にあてはまるわけではないことに留意する必要があろう。だが,21世紀になっても,依然として石油が一次エネルギー供給の,中で大きな割合を占めるとみられることを考慮すれば,日本のエネルギー安全保障の観点から,原油調達先の多様化への努力は重要な課題である。また,安全保障の観点から長期的に安定した資源確保が必要であるのは,何もエネルギーに限ったことではなく,日本の自給率の低い穀物,鉱物資源等においても同様のことが言えよう。

2. 地球環境問題

ここでは,エネルギーの利用と密接に関わり,人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼす恐れのある地球温暖化問題を取り上げ,環境とエネルギー,環境と経済成長の関係について考察する。

(1)地球温暖化問題

近年,CO2等の温室効果を持つガスの増加が地球に温暖化をもたらし,世界的な気候変動や海面の上昇などを通じて人類社会に深刻な影響を及ぼすのではないかとの懸念が急速に高まっており,科学的に予測した報告も出されてい名。地球温暖化問題は,70年代から既に各国政府や国際機関において取り上げられていたが,88年に対策も含めた総合的な検討を行う場として「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が設立されてから,本格的な取組が開始された。89年には国連環境計画(UNEP)や世界気象機関(WMO)などを中心に種々の国際会議が開催され,地球温暖化は地球環境問題の主要なテーマとして活発な議論が展開されており,既にCO2等の温室効果ガスの排出を安定化させる必要性や温暖化防止のための枠組み条約を92年までに策定することについて,国際的に合意されている。

(2)地球温暖化とエネルギー

石油,石炭,天然ガス等の化石燃料は,燃焼時や採掘時にCO2等の地球温暖化を引き起こすとされる気体を排出する。OECDによれば(第4-3-3表),87年の世界のCO2排出量は60.3億トンと推計され,うちOECDが27億トンで全体の約45%を占めており,旧共産圏が同約35%の21.2億トン,発展途上国が同約20%の12.1億トンとなっている。国別には,アメリカ,ソ連,中国,日本(ドイツ統一前)の順になっており,エネルギー使用量の大きい先進国や,人口や石炭使用比率の高い国が大きな割合を占めている。GNP当たりのCO2排出量は,国によって大きな差がみられるが,経済発展段階が低く,主ネルギー使用効率が相対的に低い発展途上国が総じで高くなっている。特に,中国はOECDの約9倍ととび抜けて高い水準となっている。また,人ロ一人当たりのC02排出量は,一人当たりのGNPが高く産業活動が活発な先進国が,エネルギー消費水準が高いことを反映して大きくなっている。

第4-3-5図はCO2排出量の長期的な見通しを示してCO2る。現在CO2排出量の約半分はOECD諸国が占めているが,将来的には非OECD諸国が経済成長を進め,エネルギー消費のGNP原単位も高まっていくので,旧共産圏ならびに発展途上国の排出割合が大幅に増加していくと予想される。従って,今後OECD諸国において早期にCO2排出量の安定化を推進すると,ともに,旧共産圏や発展途上国での排出量の増大を抑制する努力が不可欠である。

(3)地球温暖化問題と経済成長

(「持続可能な開発」の概念)

70年代に,石油等の非再生資源,地球規模の環境について懸念され,環境保全と経済成長の対立を如何にして解くかが世界的関心事となった。80年代に入って,「持続可能な開発」という概念が登場し,環境保全と経済の安定的発展を両立させるための有力な概念として受け入れられてきている。

「持続可能な開発」は経済学的には,将来見込まれる消費や生産活動から得られる経済的厚生の可能性を確保しつつ,現在享受できる経済的厚生を最適化するような経済の発展過程といえよう。言い換えれば,現存する天然資源や環境資源を適切に管理することで将来の世代の発展の可能性を残す開発方法を示している。

この考え方が世界で広く共通認識されたのは,87年に環境と開発に関する世界委員会(WCED)が出した「Our Common Future」という報告書においてであるが,WCEDが「持続可能な開発」を唱えた背景には,環境保全なくして将来の世代の可能性を残す開発は出来ないし,逆に貧困と環境破壊の悪循環から脱却するためには,環境的に健全な開発を実施して生活水準の向上を図ることが不可欠という認識がある。

(「持続可能な開発」と南北間の利害調整)

しかしながら,今後「持続可能な開発」の概念を政策レベルまで高めるには,南北間・世代間で配分すべき環境資源の質的・量的評価をどのように行っていくか,技術開発をどう織り込んでいくかといった検討課題が数多く残されている。とりわけ,「持続可能な開発」を実行するにあたって,南北間の対立をどうやって調整していくかという大きな問題がある。

地球温暖化は主に先進工業国の経済活動を通じて発生している。OECD加盟国と発展途上国を合わせたCO2排出量のうち,途上国の占める割合は30%にすぎない。しかし,温暖化の環境面での影響は先進国も途上国も等しく受ける。

しかも,途上国は今後高い成長を遂げていく過程で,多量のC02を排出することは避けられず,これを現状水準で凍結しようとすれば,今後の経済成長の可能性が大きく制約されてしまう。また,CO2削減や省エネ対策の技術,省エネ設備の導入には,将来にわたって多額の投資資金が必要となるが,途上国の大半は累積債務国であることから,先進国と同程度の対応は極めて難しい。仮に,先進国に伍して対応しようとすれば,多大なコストを負担しなければならない。このことから,地球温暖化問題への対応策に関して南北間での対立が生じている。

したがって,地球温暖化問題対策へ取り組むためには南北間の利害調整が不可避である。具体的に南北間の資源配分を調整する方法として,汚染物排出に対する直接規制や市場介入,経済援助,技術移転等様々な方法が提案されている。

3. 国際協調の枠組みの中でのエネルギー・環境政策の推進

以上でみたように,今日,世界はエネルギー・環境問題ど経済成長という基本的な課題を抱えている。これらの問題に対処するために,我々はエネルギーの持つ基本的制約の克服と健全な環境の維持の両立を目指した政策を推進するとともに,先進国と途上国の協調を図りつつ,地球規模での「持続可能な開発」の達成にむけて積極的に努力していかなければならない。

(1)エネルギーと環境の両立を目指した政策の推進

① 省エネルギー

地球規模でのエネルギー使用の効率化は,省資源及び環境保全に対する最も効果的な対策である。CO2排出量の特に多いアメリカ,ソ連・東欧,中国においては,未だ相当の効率化の余地があるものと見込まれるため,これらの国々でのエネルギー使用の効率化をどのように進めるかが最大の課題であろう。特に,アメリカの場合,ガソリンやディーゼルオイルといった輸送燃料の価格が国際水準に比べて極端に低く(第4-3-6図),このことが輸送部門のエネルギー効率の改善を遅らせていると考えられることから,エネルギー税の導入等による価格体系の是正が望まれていた。90年10月末に,多年度にわたる財政赤字削減策を盛り込んだ予算調整法が議会で可決され,その中にガソリン税の引上げが含まれていることは,その意味で歓迎すべきことであろう。

② エネルギー選択

今後,世界的に増大するエネルギー需要を賄うにあたり,各エネルギー源の有する資源量,供給安定性,環境負荷等のメリット,デメリットを総合評価した上で,長期的に最もふさわしいエネルギーの組み合わせを追求していくことが必要である。その際,化石燃料は,資源量,環境負荷両面で制約を抱えていることを考慮すれば,安全性を確保した原子力,水力等既存の非化石燃料の活用の拡大を図っていくことが重要である。同時に,資源制約の克服,今後需要が大きく拡大していく途上国ならびに後世が利用しうるエネルギー源の確保のためにも,バイオマスや太陽熱といった再生可能あるいはクリーンなエネルギーの利用促進・開発に積極的に取り組む必要がある。

③技術開発

エネルギー効率の向上と新エネルギーの開発を一層促進させるために,技術開発の果たす役割は大きい。具体的には,省エネルギー技術,新エネルギー技術,CO2除去・固定技術などが考えられるが,特に省エネルギー技術,新エネルギー技術は省資源の面からも重要である。

④ 経済的解決手段の検討

地球環境問題の解決のような長期の環境・経済目標を達成するためには,汚染物質排出枠の設定等の直接規制手段を用いるだけでなく,市場メカニズムの歪みを是正し,資源の効率的配分を図るための経済的インセンティブを利用することも必要であると考えられる。具体例としては,(1)通常の市場・価格メカニズムでは考慮されない外部不経済効果を環境コストとして内部化するため,化石燃料の使用に対し課税を行い徴収した財源を環境補助金として対策に充てる,(2)各国のCO2排出枠を設定して,枠の余っている国と枠の足りない国が売買を行う排出権売買市場を創設する,といったことが考えられる。しかし,こうした経済的手段の導入については,将来の地球環境破壊というリスクと経済成長への影響という,コストのバランスを十分検討する必要がある。

(2)途上国を含めた国際協調に基づく政策の推進

地球環境問題は,①その科学的メカニズムの解明という点では未だ不確実な.点が残っているものの,十分な科学的解明を待って対策を講ずるのでは手遅れになる可能性がある,②原因や被害が国境を越えて起きる問題であるだけでなく,世代を越えて起きる問題である,③問題の発生が国際的な政治,経済,社会問題と深く結びついている等の特徴を持っている。したがって,問題の解決にあたっては,現時点から,単に一国だけでなく地球規模での合意のもとに,「持続可能な開発」の考えに根ざした対応策を検討していかなければならない。しかし,エネルギー問題,環境問題は経済の発展段階が異なる国の間では,その費用と効果が異なることに留意する必要がある。特に,経済の発展とエネルギー消費との間には密接な関係があることを踏まえると,今後発展途上国におけるエネルギー需要の増大は不可避であることから,先進国は,途上国が貧困と環境破壊の悪循環から脱却して,「持続可能な開発」を実現できるように支援していく必要がある。そうすることで,途上国は持続可能な成長のためのエネルギー戦略を策定・実行することができ,ひいては世界の均衡ある経済発展が可能となる。

今後,世界が環境上健全で「持続可能な開発」を実現していくためはは,先進国・途上国を含む国際協調のもとでのグローバルな取組みがなされなければならない。そのためには,先進国においては,先に述べたエネルギーと環境の両立を目指した政策を推進していく一方,地球環境問題への対策として気候変動のメカニズム等科学的知見の解明に努めるとともに,対策技術の開発や経済的な解決手段の十分な研究を進めていく必要がある。さらに,発展途上国の「持続可能な開発」を支援するため,新・再生可能エネルギー技術,環境対策技術等の技術移転,環境保全のための経済援助を積極的に推進していくことも重要である。また,国際機関による環境対策のための資金協力も推進されるなど,途上国への支援体制については充実の動きがみられるところである。