平成元年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1988~89年の主要国経済

第6章 イタリア:好調な成長続く

1. 概  観

イタリアでは,83年央に景気拡大に転じて以来,好調な成長を続けているが,とりわけ87年以降は,個人消費の堅調な伸びに加え,それまで低迷していた設備投資も大幅増加に転ずるなど,消費・投資ともに好調な内需により高めの成長となっており,88年の実質GDP成長率は3.9%と比較的高い成長を達成した。89年に入っても,内需が過熱気味となるなど,好調な成長を続けており,政府経済見通し(89年9月)では,89年3.4%の成長を見込んでいる。

また,88年の消費者物価上昇率は5.0%となり,87年(4.6%)に続き,落ち着いた動きとなった。しかし,過熱気味の内需の影響を主因に付加価値税率引き上げ等の影響も加わり,88年末より物価は急速に高まりをみせた。89年後半には上昇テンポはやや鈍化したものの,依然高い物価上昇率が続いており,89年の上昇率は6.6%となった。

一方,経常収支は,87年以降,輸入の大幅増加等から悪化傾向を示しており,88年は12.1兆リラの大幅赤字となり(87年3.1兆リラの赤字),89年に入っても,1~9月累計16.0兆リラの赤字と,さらに赤字幅を拡大させている。

なお,好景気による税収増にもかかわらず,財政赤字の改善は進んでおらず(88年単年分124兆リラの赤字),財政赤字の対GDP比は,先進諸国の中でも際立って高い水準(88年単年分11.5%,88年末累積96.1%)となっている。また,雇用情勢も89年の失業率が12.0%となるなど,依然厳しい状況が続いている。


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