平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第4章 西ドイツ:80年代最高の経済成長
西ドイツの景気拡大は,83年初からすでに7年が経過し,好調な輸出,投資に支えられて,89年は80年代で最高の経済成長を達成するものとみられる。
89年には,好調な輸出と設備投資を背景に,上半期に前年同期比4.6%増と非常に高い成長を示した。政府の成長率見通しも年初は約21/2%とされていためが,3月に3%,7月に3.5%,9月に4%と期を経るにつれ上方修正された。
雇用情勢は依然として厳しさがあるものの,景気拡大が持続する中で徐々に改善している。貿易収支黒字は,対ECを中心に拡大している。物価は,年初に個別消費税の引き上げ・導入等によって上昇率が高まったほか,年初から年央にかけてのマルクの下落は輸入物価の上昇によるインフレ懸念を招いたが,年央以降は総じて落ち着いている。西独連銀は以上のような景気・物価動向,マネーサプライの伸び,マルクの動向を踏まえ,1月,4月,6月,10月と4度公定歩合を引き上げた(12月現在.6.0%)。財政面では,1月に導入された利子所得源泉課税が,国内からの長期資本流出の主因となったため,7月に廃止された。
90年の経済動向に対しては,89年秋ごろに活発化した東ドイツからの移民流入が大きな影響を及ぼすとみられる。また,86年,88年に続く90年税制改革法は,ネットで233億マルクの減税を見込んでいる。減税措置と大量の人口流入によって個人消費を中心に内需が盛り上がるとみられる一方,技術力を持った労働力の流入は潜在成長率を高めるものと予想される。しかし,92年のEC統合へ向けて,EC域内の他国の設備投資は依然好調を維持するとみられることから,資本財輸出の高い伸びは続き,貿易収支黒字の拡大が見込まれる。