平成元年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1988~89年の主要国経済

第2章 カナダ:89年に入り,経済拡大はやや減速

1. 概  観

88年のカナダ経済は,純輸出が減少したものの,内需が好調であり,実質GDP成長率は前年比5.0%(うち内需寄与度6.l%)と84年来の高い伸びとなった(第2-1表)。89年に入ると,設備投資が依然好調なものの,消費の伸びが緩やかなことから,経済の拡大はやや減速している。需要項目別にみると,個人消費は,88年初の減税や,雇用の改善による可処分所得の増加から,88年中概ね順調に推移し,前年比4.3%増となった。88年後半には伸びを高めたが,その後は緩やかな増加が続いている。また,貯蓄率は,88年前半に,8.5%と72年以来の低水準となった後,若干高まっている。民間設備投資は,稼働率の上昇や,企業収益の増加から,機械設備を中心に,前年比18.9%増(うち機械設備同23.1%増)となり,経済の拡大の主因となった。89年入り後も,企業の投資意欲が強く,堅調に推移している。一方,住宅投資は,需要の一巡と高金利により,前年比4.6%増と落ち着きを取戻し,着工件数も,低迷している。実質GDPを産業別にみると(第2-2表),88年は干ばつの影響がら,農業が不振であったが(前年比19.6%減),通信事業,鉱業等その他は概ね順調に増加した。89年に入ると,通信事業では好調な増加が続く一方,運輸業等では減少し,その他も伸びが鈍化している。雇用情勢は,概ね順調に改善し,失業率は若年失業率の低下により,一段と低下するなど,労働需給に引締まりがみられた。物価は,連邦売上税率の引き上げもあり(付注2-1),消費者物価上昇率に高まりがみられたが,卸売物価上昇率は,一次産品価格の低下がら,89年後半に入り,前月比マイナスとなっている。対外面をみると,輸出は乗用車関連が伸び悩み,一方,輸入は設備投資財を中心に増加したため,純輸出は88年後半以降減少している。その結果,経常収支赤字幅も拡大傾向にある。財政赤字は,88/89年度287億加ドルとなり(GDP比4.8%),見通し(89年4月時点)の289億加ドルは下回ったものの,依然高水準にある。


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